労働法令に抵触、あるいは抵触すれすれの就労条件で社員を働かせたり、いじめやセクシャルハラスメントがあったりと労働環境が劣悪な「ブラック企業」の大賞を決めようという、WEB投票が2012年7月9日から始まった。
ブラック企業大賞実行委員会が実施しているもので、初めての試みだ。
長時間労働、いじめ、残業代の未払い…
ノミネートされたのは、「ワタミ」「すき家(ゼンショー)」「SHOP99(現ローソンストア100)」「すかいらーく」「ウェザーニューズ」「フォーカスシステムズ」「陸援隊およびハーヴェスト・ホールディングス」「丸八真綿」「富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ」「東京電力」の10社。
いずれも、長時間労働による過労やストレス、「名ばかり店長」として働かされたうえに残業代が支払われないことや低賃金労働、パワハラやいじめ、セクハラをきっかけにうつ病を発症したり、過労死事件を起こしたり、労働組合を敵視したり、といった芳しくない「実績」や評判のある企業ばかりだ。
たとえば、ワタミは居酒屋チェーン「和民」で正社員として働いていた女性(当時26歳)が入社2か月で過労自殺した問題で、2012年2月に労災が認定された。
労災認定が報じられた2月に、ワタミの渡邉美樹会長がツイッターで「彼女の精神的、肉体的負担を仲間皆で減らそうとしていました」「労務管理できていなかったとの認識は、ありません」などと発言したことで反感を買い、すっかり「ブラック企業」のイメージがついてしまったようだ。
また、牛丼チェーンの「すき家」は深夜の営業体制が店員1人のため、強盗事件が多発したことから、社員の安全管理を問題視した。
東京電力も同様。福島第一原発の事故処理にあたっている社員の被ばく量の管理がずさんなことが指摘されているが、「そもそも下請け、2次下請けと多重請負の構造に問題があり、安全管理が不十分です」と、実行委員会は説明する。
東電ではいじめもあった。11年6月に、山梨支店に勤務していた19歳の男性社員が、いじめを苦に自殺。「職場で無視されるのがつらい」という遺書が残されていたが、東電は「無視という実態はなかった」との社内調査をまとめた。
遺族は労災認定を申請。真相究明を求める7370人分の署名を東電に提出している。
「授賞式には社長に出てきてほしい」
ブラック企業大賞実行委員会は、(1)長時間労働(2)セクハラ・パワハラ(3)いじめ(4)長時間過密労働(5)低賃金(6)コンプライアンス違反(7)育休・産休などの制度の不備(8)労組への敵対度(9)派遣差別(10)派遣依存度(11)残業代の未払い(求人票のウソ)――を、ブラック企業を見極める指標とし、これらを事実に照らして10社を選定した。
ただし、多くのブラック企業がこれらの問題を複合的にもっているので、判断も総合的に判断している。
「洒落のつもりはありません。すき家やSHOP99のケースではわたしどもも団体交渉に加わったりしてきました。ノミネートの10社は氷山の一角ですし、少しでも労働環境が改善されていけばいいのです」
WEB投票は7月27日まで。その翌28日に「受賞式」を行う。7月12日現在、大賞に最も近いのは「ワタミ」の5701票で、全体の58%を占めている。次いで東京電力の2620票(27%)、すき家350票(4%)、ウェザーニューズ212票(2%)、富士通SSL207票(2%)と続いている。
実行委員会は、「できれば社長さんにも出席してもらいたいですね」と、案内状を用意している。