「成長産業」、国民に選んでもらう逆転の発想を
そういう仕組みが、徐々に壊され、小泉政権でほぼ解体したはずが、民主党政権になって復活している。今の自民党も、古い自民党になっており、郵政再国有化に反対する議員はごくわずかを除きおらず、この意味でも、民主と自民は古い既得権維持の共同体になっている。
こうした産業政策手法の根本的な欠陥は、需要サイドではなく供給サイドに政府支援を行うことだ。この点、橋本徹大阪市長は、文楽への財政支援について面白いことを言っている。需要者(観客)でなく供給者(技芸員、協会)に支援するので既得権化し、本当の意味で芸能振興になっていないというのだ。そのとおりだ。
政府の成長戦略も、えり好みの特定産業ではなく国民にカネを渡して、それで「成長産業」を国民に選んでもらいという、逆転の発想が必要だろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。