大手百貨店の大丸と松坂屋を傘下に置く「J・フロントリテイリング」は2012年7月5日、ファッションビル大手「パルコ」の株式についてTOB(株式の公開買い付け)を実施し、子会社化を目指すと発表した。パルコは同日、TOBへの賛意を表明した。Jフロントとパルコの融合の進展は、「百貨店」の概念を変える試みを進めることになりそうだ。
Jフロントはパルコ株を33.2%保有する筆頭株主。TOBによってJフロントがパルコ株を取得する上限は、発行済み株式総数の65%に設定した。3分の2未満に抑えることで、パルコの上場を維持し、一定の「独立性」を担保する狙いだ。
焦点の一つは大手流通グループイオンの動向
TOBによるパルコ株の買い付け価格は1株1100円で、発表日の終値(947円)に比べて16%のプレミアム(時価への上乗せ額)がついた。
TOB期間は7月9日から8月20日まで。パルコの新株予約権付社債(転換社債)を保有する日本政策投資銀行は、8月1日までに普通株(18.7%分)に転換し、TOBに応じる方針。プレミアムの水準から見ても多くの株主がTOBに応じると見られ、TOB成立は確実と見られている。その場合、Jフロントはパルコに社内取締役の半数を派遣する方針も明らかにした。
焦点の一つはパルコ株の12.3%を保有する大手流通グループのイオンの動向。イオンの岡田元也社長はJフロントの発表翌日の7月6日、記者団に「(パルコ株を)売る気は全くない」と表明した。パルコとの提携協議はほとんど進んでいないが「今後もできる範囲で話をしたい」と語った。しかしTOBが成立した場合、Jフロント抜きにイオン・パルコ間の提携協議は事実上成り立たなくなるため、流通担当記者はイオンの動向から目が離せない。