文部科学省が所管する独立行政法人の日本原子力研究開発機構は2012年7月11日、東京電力福島第1原発事故後の広範囲の放射性物質の拡散を予測する「W(世界版)SPEEDI(スピーディ)」の計算結果のうち、未公表のものがあったとして、A4の資料320枚をウェブサイトに公開した。
公開されたのは、原子力機構が事故直後の11年3月16日から5月12日にかけて計算した、首都圏や東北地方の放射性物質の拡散予測図を中心とした資料。
政府機関は「公表基準に該当しない」として公表せず
未公表になっていた資料のうち、例えば3月16日には
「I-131の乳幼児被ばく臓器線量分布」
と題したものあった。I-131は放射性ヨウ素131のことを指し、半減期はおよそ8日。
これら未公表の資料のうち、一部は原子力安全委員会など政府機関にも送られていたが、「『大気放出量試算』に活用されていた可能性がある、という公表基準に該当しない」(原子力安全委員会事務局)などとして公表していなかった。
「影響度合いを定量的に評価出来る計算結果では無い」
これまで資料が未公表になっていた理由について、原子力機構では、
「WSPEEDIによる計算では、拡散状況の変化を見る事は可能であるが放出放射性物質による影響度合いを定量的に評価出来る計算結果では無く、国へ送付し、国の対策本部等で防護対策やその検討に使われる資料以外は、独自に実施していたものであり、内部利用の範囲に留めておりました」
とコメントしている。
一連の未公表資料をめぐっては、12年6月には「マスコミの誤報を収集、検証する」ウェブサイト「Gohoo(ごふー)」が原子力機構に対して情報公開請求を行い、その存在を指摘していたほか、7月2日には共同通信が「(原子力機構が)拡散予測図約330枚が未公表のままになっていたと明らかにした」などと報じていた。