朝の時間帯を狙ったビジネスが活発化している。節電という目先の課題に加え、高齢化という構造要因で朝早くから活動する人が増えているためで、外食、スーパー、さらに英会話など「早朝需要」をめぐる争奪戦が激化している。
2012年6月1日から全国で開店時刻を午前7時に、2時間繰り上げたのがスーパー最大手のイオンだ。総合スーパー「イオン」や食品スーパー「マックスバリュ」、小型店「まいばすけっと」など約1200店で実施。
朝が早いシニア層に期待
2011年は節電のために朝早くから活動する企業や個人が増え、イオンでも午前中の売り上げが増えたという。午前7時台は出勤途中の人などの需要をコンビニと駅の売店ががっちり押さえてきたが、スーパーにも寄ってもらおうという狙いだ。また、朝が早いシニア層が増える中で、将来的にも朝方の需要増加が見込めるという読みもある。9月初めまでの期間限定で、 170億円の売り上げ増を見込むというが、将来に向けた市場調査の意味合いもうかがえる。
外食産業も朝に力を入れる。すかいらーくは主力の「ガスト」で、3月から、従来は500~600円台が中心だった朝食メニューに200~300円台を加えた。BLTサンドのセットなど399円3種、厚切りトースト+飲み物(240円)などをそろえた。
シウマイの崎陽軒は「ハマの朝ごはん弁当」
モスフードサービスは全店舗の15%にあたる約210店舗が午前7時開店しているが、これを12年度末までに320店舗に大幅拡充する。11時まで「モーニング野菜バーガー」(ドリンクとセットで360円)など値ごろ感あるメニューで、11年から「朝マック」として朝食メニューに力を入れるマクドナルドに対抗する。
日本ケンタッキー・フライドチキンは、朝食メニューを出す店を約100店舗から300店舗に拡充中。ゼンショーホールディングスの牛丼「すき屋」も、5月から午前5時~10時半の朝食メニューに200円定食「たまごかけごはん朝食」を追加している。また、シウマイの崎陽軒(横浜市西区)のように、「ハマの朝ごはん弁当」(590円)を平日午前限定で販売開始したところもある。ちょっと小ぶりな朝食向け幕の内風弁当で、「鮭の塩焼き」をメーンに、シウマイ、豆腐、根菜、きのこなどのおかずを詰め合わせた。
朝の需要も一過性のブームというより、構造的
早朝を活用した自己啓発も活発だ。20か国語の遠隔語学レッスンを提供しているイーコミュニケーション(東京都新宿区)は、「朝活」需要が高まると見込み、時差を活用した朝英語レッスンのサービスを強化。年末までの半年間、海外在住の講師人員を倍増して早朝レッスン利用の割合(現在25%)を50%に倍増する方針という。
EYS-STYLE(同)が運営する音楽教室「EYS音楽教室」は、7月から、毎週水曜の朝7時から新宿教室のレッスンルームを無料で利用できる「EYS夏の朝練プラン」を開始。レッスン会員、バンド会員が対象で、平日だけではなく土日の実施も検討していくという。
早朝需要の拡大は、節電により、暑くなる前に仕事をより多く消化しておこうという企業や個人が増えているのが第一の要因。加えて、団塊世代の大量退職で早朝から動く高齢者が増えたこともある。関係者は「原発を巡る状況を踏まえれば節電が長期にわたって続くし、高齢化は今後も加速する。朝の需要も一過性のブームというより、構造的なものと考える必要があるだろう」(小売業界関係者)と分析している。