引っ張りだこのボランティア ポン菓子が被災者との距離を縮めた【岩手・花巻発】

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出発を前に入念に製造機を点検する佐々木さん(左)と塚本さん=花巻市東和町の「とうわボランティアの家」で
出発を前に入念に製造機を点検する佐々木さん(左)と塚本さん
=花巻市東和町の「とうわボランティアの家」で

(ゆいっこ花巻;増子義久)

   「これって、笑いの魔術師。ドン~と一発。その瞬間にみんな笑顔になってしまうんだから…」―。花巻市東和町の「とうわボランティアの家」を拠点に沿岸被災地の仮設住宅などで「ポン菓子」を振る舞っている2人の若いボランティアがあちこちで引っ張りだこになっている。米などの穀物に圧力をかけて膨らませる昔懐かしい駄菓子で、この地方では「ドン」とか「爆弾」などとも呼ばれている。


   福岡市出身の佐々木英一さん(21)と福岡県行橋市出身の塚本太郎さん(33)の2人でともに4月中旬から被災地支援を続けている。佐々木さんは鳥取県の大学を中退し、将来の希望を失いつつあった時に大震災に遭遇した。「大学では自然環境学を専攻したが、数字を羅列するだけの学問に失望した。あの凄まじい惨状をテレビで見た時、『何か役に立つことをやりた い』と居ても立ってもいられない気持ちになった」と佐々木さん。


   塚本さんも大阪の大学を卒業後、町工場などを転々とするバイト生活を続けた。「今考えると、自分自身が一体何をやりたいのか。肝心の自分がそのことを分かっていなかったような気がする。震災が発生した時、『ひょっとすると、被災地の現場に回答が隠されているのではないか』と直感的に感じた」と塚本さんも話した。


   大船渡、陸前高田、大槌、釜石…。朝7時、製造機を車に積み込んで出発し、戻るのは日が暮れてからになる時も。最初のうちは被災者にどう声を掛けたら良いのかも分からなかった。「失語症というのか、 大げさに言えば最初は地雷を踏むような覚悟だった」と佐々木さん。そんな時に威力を発揮したのが、知り合いから譲り受けた「ドン」だった。


   「まず、爆弾のような音にみんなびっくり。でも、すぐに顔全体が笑っているんです。子どもたちはもう大喜び。お年寄りたちも『おれ達の子ども頃はこれが楽しみでなぁ』とニコニコ。会話のきっかけはこの『ドン』が作ってくれたようなもんです。被災者の皆さんとの距離感が一気に縮まったようで…」と2人。


   最近、「ドン」のかたわら仮設住宅を回りながらの「お出かけボランティア」も始めた。病院の付き添い、買物代行、散歩…と何でもござれ。「寄り添い」がその基本。塚本さんがうれしそうな表情で話した。「被災地のあるお年寄りがバラを見たいって。で、花巻温泉のバラ園にお連れしたら、とっても喜んでくれた。 花を観賞する気持ちになったのかと思うと、こっちの方が元気づけられているみたいで…」。


   佐々木さんも口を添えた。「こっちに来てから 自分が一回り大きくなったみたい。支援って逆なんですね。大学を中退してクヨクヨしていた自分が情けなく思えます。被災者の皆さんからパワーをもらっているのは実は自分たちの方なんだと。最近、そのことがやっと分かりようになりました」。2人の支援活動は10月末まで続く。



ゆいっこ
ゆいっこネットワークは民間有志による復興支援団体です。被災地の方を受け入れる内陸部の後方支援グループとして、救援物資提供やボランティア団体のコーディネート、内陸避難者の方のフォロー、被災地でのボランティア活動、復興会議の支援など、行政を補完する役割を担っております。
ゆいっこは、「花巻」「盛岡」「北上」「横浜」「大槌」の各拠点が独立した団体として運営しておりますが、各拠点の連携はネットワークとして活用しております。
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