「故郷を捨てるのか」 進まない復興計画に帰還を断念【岩手・花巻発】

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これから先の生活について話し合う被災者たち=花巻市一日市のゆいっこ事務所で
これから先の生活について話し合う被災者たち=花巻市一日市のゆいっこ事務所で

(ゆいっこ花巻;増子義久)

   「遅々として進まない復興計画を待っていてはこの先の見通しは立たない」―。東日本大震災から間もなく1年4か月になろうとしているが、花巻市内に避難している被災者の中には故郷への帰還をあきらめ、同市内に終(つい)の住まいを求める人たちが増えている。5日、すでに居を移した被災者などが集まり、今後 の生活設計などについて情報交換した。


   花巻市内への避難者は6月18日現在で、釜石市(62世帯 103人)、大槌町(104世帯 229人)、陸前高田市(26世帯 40人)、山田町(17世帯 41人)、大船渡市(12世帯 29人)、宮古市(8世帯 15人)、宮城県(27世帯 56人)、福島県(13世帯 31人)の計269世帯 544人 。この日集まったのは大槌出身8人、釜石市出身3人、山田町出身1人の計12人(11世帯)で、うちすでに花巻市内に中古物件を購入したり、新築を計画している被災者は6人(5世帯)に上った。


   大槌町から着のみ着のままで避難した佐々木敏郎さん(82)は先月、花巻市郊外に古い家を見つけて引っ越した。「かあちゃんと二人住まい。復興住宅が完成するまで生きていることができるかどうか。二人で静かに余生を送りたい」と佐々木さん。山田町出身の瀬川清さん(63)は閑静な住宅街に家を新築中。敷地は60坪で費用は全部で3500万円。「県や町の補助金は400万円ほど。95歳の母親にはあの津波の恐ろしさを思い出させたくない。家族4人が貯金をはきだして決断した」。9月中には転居できる見通しだという。


   最後まで思い悩んだ被災者も…。大槌町の家が跡形もなく流失した鈴木みよさん(58)は最近、花巻市内の中心部に100坪の土地を購入した。あの大震災で 夫と町役場に勤めていた娘さんを失った。娘さんはまだ見つかっていない。「娘を残したままでと夜も眠れないほど悩みました。名古屋で働いていた次男も震災のショックで戻ってきた。大槌町では若者の仕事場もないので…」。鈴木さんは大槌時代に営んでいたスナックを再建し、次男と二人で生きていく覚悟を固めている。


   「花巻で生活していきたい。でも、故郷を捨てるのかという声も聞こえて来る」。ご主人を津波で亡くした伊藤ヤスさん(76)はいま、同市内のみなし仮設で一人で暮らしている。「根なし草になってしまうのかという不安に苛まされることがある。故郷の夫のお墓をしっかり守ることで、自分をつなぎとめていくしかない」と伊藤さん。


   震災の記憶が風化する中で、被災者の将来に対する不安は日に日に強まっている。ゆいっこ花巻では近く、事務所内に被災者が気軽にくつろげる「たまり場」(簡易カフェ)を設け、情報交換など被災者の不安解消の支援にも力を注ぐことにしている。



ゆいっこ
ゆいっこネットワークは民間有志による復興支援団体です。被災地の方を受け入れる内陸部の後方支援グループとして、救援物資提供やボランティア団体のコーディネート、内陸避難者の方のフォロー、被災地でのボランティア活動、復興会議の支援など、行政を補完する役割を担っております。
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