外資系金融機関、学生の人気凋落 リストラは「若手」から

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   高額な報酬が得られると、かつては優秀な学生が集まった外資系金融機関の人気が凋落している。

   自国での採用を抑えていることもあり、日本で採用枠があっても「狭き門」ではあるが、それを突破したにもかかわらず、入社して1~2年でリストラの対象となって辞めていく社員が少なくないようなのだ。

リーマン・ショックに欧州危機で大規模リストラ

   金融人材コンサルティング会社のエグゼクティブ・サーチ・パートナーズ(ESP)の調査によると、外資系金融機関(証券、銀行、資産運用、投資会社などを含む)の社員数は2011年9月現在、推計で2万2139人。前回調査の10年6月に比べて1832人減少(7.6%減)した。

   減少数としては、リーマン・ショック直後の「第1波のリストラ」による減少数4198人の44%に相当する。外資系金融機関は12月決算が多く、そのため決算後のボーナス交渉でさらにリストラが加速。昨年9月から現在に至るまで、数百人規模で辞めていったともみられている。ESPでは、これを「リストラの第2波」と指摘する。

   原因は、欧州の債務危機をきっかけとした世界的な金融不安だ。なかでも、「震源地」の欧州は、UBS証券やドイツ銀行グループといった金融グループが「大ナタ」を振るわざるを得なくなっている。

   一方、米国系はゴールドマン・サックス(GS)やJPモルガン・チェイス、シティグループなどは、リーマン・ショック直後に大規模リストラを断行。「このときに(経営規模を)縮小したこともあり、欧州危機でのリストラは比較的小ぶりで済んでいる」(ESPの小溝勝信社長)と、しぶとさをみせる。

   とはいえ、2011年以降、どこも1000~4000人規模、HSBCホールディングスなどは3万人もの人員削減に踏み切っている。

もう年収アップ期待して渡り歩くことは無理?

   ESPの小溝勝信社長は、「米国系金融機関は、1社あたり30人程度の新卒採用がありますが、さすがに欧州系は厳しいです」と話す。欧州系金融機関では、年末ごろには採用計画がほぼ凍結されていたという。

   そうした中で、外資系金融機関で働きたいという新卒学生も減ってきた。

   こんなカラクリがある。「本国からの人件費削減の要請に、東京支店長らは、中堅の優秀な人材を繋ぎとめておくため、入社1~2年目の若手社員をリストラの対象にしてしまうんです」、と小溝社長は漏らす。

   仮に、平時にベースとなる報酬が2000万円で、ボーナス(2000万円)と合算して4000万円の年収を得ていた、優秀な社員がいたとする。そんな社員に対しては、報酬のベースを3000万円に上げて、ボーナスを50%カットする。年収は500万円増えるのだから、どこかで帳尻を合わせなければならない。

   結果として、人員を削って全体の人件費を抑えようとするわけだ。

   もちろん、年収が今では外資系金融トップクラスでも3000万円程度、景気のよかった頃の半分程度に減ったこともあるが、そんな先輩を見ている学生たちに、外資系金融機関に入りたいという気持ちなど起こらなくなって当然だろう。最近は、日本企業からも内定を得た学生が、外資系金融機関の内定を辞退するケースもあるらしい。

   景気のよかったときは、若手社員が入社後すぐに辞めても、別の外資系金融機関に入社できたが、それこそ現在はどの金融機関も採用をしぼっているので再就職がむずかしい。

   かつてのように、外資系金融機関を渡り歩いて、それに伴い年収もステップアップしていくことなど、夢のような話になっている。

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