もう年収アップ期待して渡り歩くことは無理?
ESPの小溝勝信社長は、「米国系金融機関は、1社あたり30人程度の新卒採用がありますが、さすがに欧州系は厳しいです」と話す。欧州系金融機関では、年末ごろには採用計画がほぼ凍結されていたという。
そうした中で、外資系金融機関で働きたいという新卒学生も減ってきた。
こんなカラクリがある。「本国からの人件費削減の要請に、東京支店長らは、中堅の優秀な人材を繋ぎとめておくため、入社1~2年目の若手社員をリストラの対象にしてしまうんです」、と小溝社長は漏らす。
仮に、平時にベースとなる報酬が2000万円で、ボーナス(2000万円)と合算して4000万円の年収を得ていた、優秀な社員がいたとする。そんな社員に対しては、報酬のベースを3000万円に上げて、ボーナスを50%カットする。年収は500万円増えるのだから、どこかで帳尻を合わせなければならない。
結果として、人員を削って全体の人件費を抑えようとするわけだ。
もちろん、年収が今では外資系金融トップクラスでも3000万円程度、景気のよかった頃の半分程度に減ったこともあるが、そんな先輩を見ている学生たちに、外資系金融機関に入りたいという気持ちなど起こらなくなって当然だろう。最近は、日本企業からも内定を得た学生が、外資系金融機関の内定を辞退するケースもあるらしい。
景気のよかったときは、若手社員が入社後すぐに辞めても、別の外資系金融機関に入社できたが、それこそ現在はどの金融機関も採用をしぼっているので再就職がむずかしい。
かつてのように、外資系金融機関を渡り歩いて、それに伴い年収もステップアップしていくことなど、夢のような話になっている。