滋賀県大津市の中学2年生の男子生徒が自殺したことをめぐって、教師が男子生徒へのイジメを認識していながら、適切な対応をとっていない可能性があったことが明らかになった。
男子生徒が「自殺の練習をさせられていた」と記されていた全校アンケートでは、14人の生徒が「先生が見て見ぬふりをしていた」「先生は、一度は注意したけれど、その後は一緒になって笑っていた」などと証言していた。
「先生もイジメのことを知っていたけど、怖くて言えなかったらしい」
全校アンケートでわかった教師がイジメを放置したことを示す回答は、記名が8人、無記名6人で、直接見聞きした内容が1人、伝聞が13人だった。
そこには「男子生徒が先生にも泣きながら電話でイジメを訴えたが、あまり対応してくれなかったらしい」との指摘や、「先生もイジメのことを知っていたけど、怖くて言えなかったらしい」などの記述もみられた、とされる。
いずれにしても、教師がイジメを看過したとも受け取れる「証言」だ。
2012年7月6日放送のフジテレビの情報番組「とくダネ」で、教育評論家の尾木直樹氏は、「生徒からこれだけ報告が出てくるケースは珍しい。なのに、先生方の感覚がマヒしちゃっていた」「(笑っていることなど)感性が教師のレベルに達していない」と、呆れぎみにコメントした。
「無記名だったので、事実確認ができていません」
一方、大津市教育委員会は「一緒に笑っていた」ことについて、「加害者の生徒と亡くなられた生徒は、もともとは仲が良かったそうで、その雰囲気の中で笑いあっていたことがあったからではないか、と聞いています」と釈明。看過したわけでもない、とした。
また、「先生がイジメのことを怖くて言えなかった」ことについては、「(アンケートが)無記名だったので、事実確認ができていません」と話した。
とはいえ、教育現場にいる教師が「怖い」存在とは何かと、聞いたところ、教育委員会や学校長がプレッシャーをかけるようなことはないと、否定。「校長からは意見交換などに不備があったような報告は受けていません」としている。
半面、教師が保護者からのクレームを怖がっているケースは、大津市に限らず目立って多くなっている。教師が保護者の「目」を強く意識していることはあるようだ。
そのために、たとえば校外学習の引率の教師や、部活動の顧問を引き受ける教師がいなくなるなど、できるだけ波風を起こさないよう、事務的授業をこなしていく「事なかれ主義」の教師は少なくないようなのだ。
イジメと自殺との因果関係を認めてしまっては、教育委員会から学校長、担任までが議会やメディアなどから厳しく追及される。教師にとってそれは避けたいというわけだ。