ワタミフードサービスが一部メニューで「味に満足しなければ無料になる」というキャンペーンを始めた。過去にも他の外食チェーンで似たようなキャンペーンが行われたことがあったが、「タダ」を要求する客はどの程度出てくるだろうか。
居酒屋チェーン「和民」の20周年を記念したもので、2012年7月から始めた。「ニッポンは美味しい。『ご満足いただけない場合、お代は頂戴しません。』」というキャンペーンだ。
一皿半分以上食べると対象外
対象となるのは、「和民」「坐・和民」「和み亭」の全381店舗。和民のメニューの中でも特に自慢だという6商品、「新鮮アジフライ」(418円)、「卓上炙り〆サバ」(523円)、「チーズinつくね」(261円)、「17品目のサラダシリーズ」(523円)、「自慢の自家製餃子」(313円)、「プレミアムパンアイス」(313円)を注文し、「美味しくない」と感じた場合、無料になる。
無料にできるのは、2人以上で来店した場合1商品1皿まで。一人で来店の場合、3商品までで、1商品につき1皿。
そして、食べているときに「美味しくない」と従業員に「明確」に伝える。会計時や会計後に申告した場合や、一皿半分以上食べてしまった場合は対象外となる。また、無料になった客には商品開発の参考のため、アンケートの協力を依頼。キャンペーンは9月30日まで実施するが、数量限定品のため、早期終了することがあるとしている。
居酒屋で「満足しなければ無料」というのは珍しいが、ネットでも話題になり多くの書き込みが寄せられた。「ワタミはしごするかぁ~!」「お通し代だけのオフ会が開かれる予感」「誰か『美味しくない』を連発して6品全部を無料で制覇しに行きませんか?」といったものもあるが、「飲み会中にわざわざ申告するのがめんどいな」というものもある。
「悪い客に絡まれるリスクあるが、宣伝効果の方が大きい」
実際、どの程度の客が「美味しくない」と申告するだろうか。似たようなキャンペーンをハンバーガーチェーン、ロッテリアが2009年に行ったことがある。360円の「絶妙ハンバーガー」を購入後、食べてみて美味しいと感じられなければ返金に応じるというもので、当初は最大で5%の返金率を見込んでいたが、実際は0.2%だった。新聞やテレビでも話題になり、広告効果は数億円とも言われた。
外食産業に詳しい経済ジャーナリスト、中村芳平氏は今回のキャンペーンについて「和民は居酒屋ではなく『居食屋』といっているぐらいで、食べ物の原価率が高く、品質には自信がある。今までの経験則から大丈夫だと思ってやっているんでしょう」と語る。質の悪い客に絡まれる危険性はあるが、0.2%という前例もあるので、「美味しくない」と言ってくる客は「ほとんどいないのでは。リスクはあるけど、それ以上に宣伝になるでしょう」と見る。
また居酒屋チェーン業界では依然、和民よりも安い全品280円均一といった低価格チェーンの勢いが増している。中村氏は「客が流れないよう和民も必死です。今回のキャンペーンは『とうとうそこまでやるか』という感じですね」と話していた。