米ツイッター社が、利用者の過去のツイート(つぶやき内容)を英IT業者に販売している。業者は、ツイートを分析してマーケティングなどに活用したい顧客に向けて、必要な情報を抜き出すサービスを始めた。
現在では、全世界で1日に3億件を超えるツイートが飛び交う。これまでに蓄積された「ビッグデータ」を商売道具とするツイッター社には、批判的な意見も上がっている。
過去のツイートは消滅せず、すべて記録が残っている
英データシフト社は2012年2月28日、ツイッター社から2010年1月以降2年分のツイート内容の提供を受け、それに基づいた「データセット」の販売を開始した。
ツイッター社の3月21日の公式発表では、頻繁にツイートを投稿する「アクティブユーザー」の数は1億4000万人に達し、1日3億4000万ものツイートが流れる。これまでに膨大な量が蓄積され、今も連日増え続けるツイートの中には、生の声ならではの有益な情報も少なくないだろう。
しかし、この「ビッグデータ」から必要情報だけを掘り起こすのは容易ではない。そこでデータシフト社が、ツイッター社からアクセスを許された過去の大量のツイートをベースに、顧客が欲しがる情報をフィルタリングして絞り込む。ある商品やサービスについて「肯定派」「否定派」のツイートに区分けしたり、「ファッション」「食」「金融」といったテーマごとに分類したりして提供するのだ。
ユーザーの過去のツイートは消滅しているわけではなく、すべて記録が残っている。個人レベルでも「トプシー(Topsy)」のような検索サービスや特定のアプリを使って、過去にさかのぼってツイートを探すのは可能だが、相当の時間と労力を覚悟しなければならない。有益な情報だけを効率よく抽出できるかも不透明だ。
最近は企業も、ビッグデータの活用に注目している。例えば小売業では、顧客にポイントカードを登録してもらう際に年齢や性別、住所を記入してもらい、そこから顧客ごとの購入履歴をためていく。集まった膨大なデータを解析するなかで、ある商品をどんな人が購入しているか特徴を把握する。ツイッターの場合はツイートそのものがビッグデータを形作るが、これはツイッター社自ら収集したというよりも、投稿者がツイートして「集まって来た」もの。ツイートを利用する権利はどうなっているのだろうか。
規約ではコンテンツの使用を「無償で許諾」
ツイッターの「サービス利用規約」を見てみよう。ユーザーは「自ら送信、投稿、表示するあらゆるコンテンツ」、すなわちツイートについて権利を有するとある。ところがそのコンテンツを使用、コピー、処理、改変、修正するための「非排他的ライセンス」をツイッター社側に「無償で許諾するものとします」となっている。投稿されたツイートはツイッター社側が流用させてもらう、と「利用権」を主張しているのだ。
さらにその後で、ツイッター社だけでなく「ツイッター(社)のパートナーとなっている会社、組織または個人」についても、ツイートについては「ユーザーに報酬を支払うことなく…追加的に利用できるものとします」と定められていた。要するにツイートした内容の権利はユーザー本人に認めるが、それと同時にツイッター社とそのパートナーである第三者がツイート自体を利用できる決まりになっている。
この規定を理解したうえでユーザーがツイッターに登録、使用している以上、ツイッター社がこれまでの蓄積データを業者に売り渡しても問題とは言えない。ただ、インターネット上の交流を目的にツイッターに参加し、投稿しているユーザーにとっては、自身のツイートがビジネス目的に転用される点に疑問を持つ向きもある。
2012年2月28日付の英BBCニュース電子版によると、プライバシー保護を推進する国際団体が、ツイッター社が過去ツイートを販売したことについて「間違った方向に舵を切った」と批判。さらにオンライン上の権利保護を訴える米国の団体も「気味が悪い」とコメントしている。