「大連立」視野に国内調整
政府の説明を真に受けていたマスコミも「カナダには虚を突かれた」(大手紙経済部デスク)形で、多くの大手紙がメキシコの参加を受けて日本の出遅れを指摘する大きな解説記事を掲載。その日の記事の中で、わざわざカナダ参加が容易でないと触れた読売は、カナダ参加が決定した翌日に一段と大きな記事を展開し、「日本誤算」「米に甘え、油断」などと書き込んだ。
この記事が指摘するように、小さな国と米国による交渉だったTPPが、昨秋の日本の参加意欲表明で一気に格が上がったことから、米国は日本に配慮するはずと、高をくくっていた日本政府の読み違いは否定できない。
米国に交渉参加の90日前までに議会に通告するルールがあるため、日本が年内に参加するには、9月のAPEC首脳会議あたりまでで参加表明する必要があるが、野田内閣は消費税最優先で進んできたため、農業団体を中心に反対が根強いTPPについての国内調整は「後回し」(政府関係者)にされてきたのが実態だ。
ただ、消費税をめぐり、事態は3党合意、小沢一郎元代表グループの造反に至り、国内調整が進むとみる読みもある。民主党内のTPP慎重・反対派は、消費税増税に慎重・反対派とかなりの部分、重なるので、小沢氏のグループが離党するなどで、党内の反TPP派も減るというわけだ。自民党もTPPに慎重論が根強いが、「半分与党化した今、TPPもまとめる方向で動かざるを得ないし、それは与党時代の自民党がやってきたこと」(民主党議員)。
「民自公の消費税合意は大連立を視野に入れたもの」(大手紙政治部デスク)であるとすれば、消費税以外の諸懸案であるTPPでも意外に早く前進するという見立てになるのだが。