消費税、原発と並ぶ政権の三大課題の一つに数えられる環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加問題で、日本の出遅れが一段と鮮明になっている。
2012年6月18、19日の20カ国・地域首脳会議(G20)の際に、野田佳彦首相からオバマ米大統領に交渉参加を伝えるシナリオも検討された時期があったが、消費税政局のあおりで吹き飛び、日本抜きのルール作りが進む懸念が強まっている。
参加は「3国同時」の読みが狂う
G20を舞台にした首脳外交の中で、日本は2連発の強烈パンチを浴びた。まず18日、オバマ大統領とメキシコのカルデロン大統領の会談で、メキシコの交渉参加が決まった。TPP交渉には米国など9か国が参加しており、新たに加わる国は、全9カ国の同意が必要。メキシコは米国以外の8カ国の同意も取り付けた。2発目のパンチは翌19日。オバマ大統領とカナダのハーパー首相の会談で、メキシコ同様にカナダのTPP交渉参加も決まった。
この2カ国は昨年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)に前後して、日本とほぼ同時に交渉参加を表明していたが、「実際には日本の参加検討を受けて加わる方針を打ち出したもので、参加は3か国同時になる」(政府筋)との見方が一般的だった。
実際、G20前日の17日の野田首相とカルデロン大統領の会談後、日本政府は「交渉参加に向け、両国が緊密に情報交換していくことで一致した」と発表していただけに、オバマ・カルデロン会談で恥をかかされた形。今回、野田首相はオバマ大統領とはG20会議の合間に「立ち話」をしたにとどまり、「日本の交渉参加に向け両国が努力することで一致した」だけ、つまり具体的には何の進展もなかった。
それでも、メキシコは従来から貿易自由化に熱心で、「米国にとってTPPに受け入れやすい仲間」(政府関係者)だけに、意外性は少なかったが、カナダの参加には日本政府もショックを隠せない。米国、メキシコとともに北米自由貿易協定(NAFTA)を構成するカナダだが、「牛肉やバターなど農業保護政策をとっており、米国は簡単にTPP交渉参加を受け入れない」(通商筋)との見方が強かったからだ。