東京電力の家庭用電気料金の値上げめぐり、家庭のエネルギーをすべて電気でまかなう「オール電化住宅」の電気料金の割引サービスが「やり玉」にあがっている。2012年7月2日には、経済産業省の電気料金審査専門委員会が東電に割引サービスの見直しを求めた。
「オール電化住宅」はガスを使わないことで、裸火による火災の危険性が低いことや、東日本大震災以降は災害後の復旧がガスに比べて電力のほうが早いことを「売り」にして普及が進められてきた。東電管内のオール電化住宅は3月末時点で約102万戸にのぼる。
すべての家庭で「昼は高く、夜は安い」
東電にとってオール電化住宅は、電気の販売量が増えるとともに、これまでは使わないとわかっていながら発電していた夜間の時間帯の電気を利用することで1日の電力需要の変動を小さくできるメリットがある。そのため、電気料金の割引サービスは家庭への売り込みに使っていた。
オール電化住宅向けの電気料金プランは、昼間の電気料金が通常プラン(従量電灯分)の約1.5倍にまで高くなるが、夜間(23~7時)は通常の半分以下の料金になる。
電気料金審査専門委員会は、こうしたオール電化住宅の家庭だけを優遇する料金プランは不公平と判断した。
一方、東電は今回の家庭用電気料金の値上げにあたり、「昼は高く、夜は安い」料金プラン「ピークシフトプラン」を設け、6月1日に導入した。
このプランは夏季(7~9月)の場合、夜間(23~7時)は9.17円と安く、昼間(7~13時、16~23時)は26.53円、さらにピーク時(13~16時)には44.60円と、夜間に比べて約5倍高い料金に設定した(いずれも、毎時1キロワットあたりの電力量料金単価)。
東電では、一般家庭で昼間の時間帯から夜間へ利用をシフトした場合、通常(従量電灯B)と比べて年間3030円安くなるとしている。ただし、電気の利用の仕方によっては必ずしも安くならないことがある。
とはいえ、オール電化住宅でない家庭にこのプランのメリットが現れて、導入が広がってくれば、オール電化住宅だけに限定して割引サービスを提供する必要が薄れる。
東電も、「(専門委員会で)ピークシフトプランの需要を広く喚起していったほうがよい、との意見があったことは聞いています」と話している。