生薬を用いた日本生まれの肝臓がん治療法が国際医学誌に掲載された。西洋医学的な有効性の証明は、一定数の患者に統一した治療をし、治療しない患者群と比較して、統計学的に必然かどうかを判断することが原則だ。しかし、個人の体質などで処方を変える漢方など東洋医学的な治療法は説得力に乏しかった。
「天然制がん剤」を使用
国際医学誌「統合がん治療」(4月26日電子版) が採用したのは、高知県・土佐清水病院の丹羽耕三 (論文名は靱負=ゆきえ) 院長が開発した「丹羽療法」の延命効果を検証した論文。丹羽さんたちは1998年から肝臓がん治療をしているが、2回以上受診した101人を対象にした。丹羽療法では生薬を特殊な加工法で活性化する。生薬やキノコ類を配合した原料を土鍋で遠赤外線加熱し、麹で発酵させ、ゴマ油に浸した後、粉末化した「天然制がん剤」を用いる。
論文によると、患者には、12種類の制がん剤が用いられた。50人はそのうち4種類以上を飲み、51人は3種類以下で止まっていた。この2群は肝硬変、C型・B型肝炎、転移、以前の治療内容など基本的な背景に大きな違いがなく、丹羽さんらはこの2群の効果を分析、比較した。
3種類以下グループの生存期間の中央値は6.4カ月だったのに対し、4種類以上グループは40.2カ月で、延命効果があることが統計的に確かめられたという。
101人のうち23人は、他の病院で治療法がないといわれたため、丹羽療法だけしか受けなかった。この患者だけの比較でも、3種類以下グループ (11人) の生存期間中央値が4.2カ月に対し、4種類以上グループ (12人) は22.6カ月だった。
生薬材料をチェックしたところ、キノコの1種「冬虫夏草」は、4種類以上グループ50人中25人に入っていたのに対し、3種類以下グループ51人では2人だけだった。4種類以上グループで冬虫夏草を含んでいた25人の中央値は55.7カ月、含んでいなかった25人は32.5カ月だった。
(医療ジャーナリスト・田辺功)