「福島第一原発から約35キロ離れた福島県田村市内で、毎時67マイクロシーベルトの高い空間放射線量を計測」――文部科学省のサイトに2012年6月28日、そんな異常な数値が掲載され、ネットを中心にちょっとした騒動となった。
原子力災害現地対策本部が29日、計測機器の故障が原因と発表したことで事態は収束に向かったが、その間には武田邦彦・中部大学教授などが避難を呼びかけ、また民主党議員が文科省に調査を要請する一幕もあった。
武田教授「福島4号機からの漏洩では…」
問題となったのは、文部科学省が福島県各地に設置している可搬型モニタリングポストの測定結果だ。このうち田村市常葉行政局に設置された機器の測定値が28日夕方ごろから急に上昇、乱高下を繰り返しつつも、夜7時30分前後には毎時66.983マイクロシーベルト、年間被曝量に換算すれば600ミリシーベルト近い数字を記録した。ちなみに政府では年間50ミリシーベルトを超える地域を「帰還困難区域」としている。
この数字は文部科学省のサイト上で随時公開されており、特に原発問題に対して積極的に発言している武田邦彦教授が29日朝、自身のサイトに「緊急情報」と称して掲載したことで広く拡散した。武田教授は、福島第1原発4号機から漏洩した放射性物質が原因では、と主張し、
「田村市は避難する必要があり、郡山市は避難準備に入らなければならない。また風向きが変わる可能性があるので、福島県を中心に警戒が必要である」
と呼びかけた。
民主党の参議院議員も反応
こうした事態にツイッターでは、
「みなさん、ヤバいです。次の情報を待ちましょう」
「テレビ何にも報道してないですが、どうなってるんでしょうか?」
「関東の人、今日明日は窓開けない方が良さそうだね」
とおびえる声が相次いだ。民主党の谷岡郁子・参院議員も「文科省に電話して何が起きているのか調べるよう要請しました」とつぶやくなど、騒動は政界にも及んだ。一方で、付近に設置された他のモニタリングポストの数値がいずれも平常通りだったことから、測定機器のトラブルを疑う声も早くから見られた。
そして上述のとおり、結論は「故障」。田村市職員による現地調査でも、平常並みの数値が確認されたという。武田教授も「警戒解除できます」「まずは安心してください」とサイト上で告知した。と同時に、高い測定値を確認していながら政府が警戒などを呼びかけなかったことを、
「もし、危険レベルの測定値がでても警報を出さないなら、測定をしないのと同じです。被曝してから通報では何のために国民は税金を払い、国家や自治体に人を雇い、防災体制をしいているのかわかりません」
「谷岡先生のご調査がなければ国民は判断すらできなかった。恐怖政治!!」
と改めて非難していた。