大赤字ソニー、ストリンガー前会長の「年俸4億円」 「経営責任」取っているのか?

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   2012年3月期の連結決算で過去最悪となる4566億円の最終赤字に陥ったソニーのハワード・ストリンガー前会長の報酬総額が4億4950万円になったことが、6月27日に開示された有価証券報告書でわかった。

   11年3月期の8億6300円と比べて半分強にとどまり、業績連動報酬は全額返上。基本報酬の2億7700万円を受け取った。さらにストックオプション(自社株購入権)として前期と同じ50万株が支給されたものの、株価の下落が影響してその分は1億7250万円となった。

在位7年間のうち4年が赤字

   ストリンガー氏がソニーの経営トップに就いた2005年以降、ソニーは製品(ハード)と映画や音楽などのソフトの融合を目指した。

   しかし、しだいにソフト偏重が色濃くなり、「モノ作り」にかかわる技術力や、音楽を携帯できる「ウォークマン」のような製品を生み出す発想力が衰え、製品部門はリストラを繰り返すようになる。

   テレビ事業では世界で初めて、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)テレビの市販に踏み切ったにもかかわらず、いまではサムスンとLG電子の韓国勢に圧倒されている。

   テレビ事業は8期連続の赤字。それどころか、ソニーはストリンガー氏がトップとして在籍した7年間のうち、4年間も赤字を計上したのだ。

   当初は会長にとどまるとみられていたストリンガー氏の退任は、業績低迷の責任を明確にするためだったとされる。自身も「経営責任は当然ある」と認めてはいるが、08年のリーマン・ショックや東日本大震災などに見舞われたことを理由に、「厳しかったのはソニーだけでない」などと言い訳した。

   そんなストリンガー氏への報酬が4億円では「高い」と思っている人は少なくないだろう。

   外資系企業に勤務した経験をもつ経済アナリストの小田切尚登氏は、「米国では、トップはストックオプション(株式)で報酬をもらう割合が大きい。だから頑張れるし、受け取る報酬額もそれによって変わってくる」と話す。

   たしかにストリンガー氏の場合、12年3月期もストックオプションで50万株を受け取っているので、1株当たりの「理論価値」が前期と同じ1036円(12年3月期は345円)だったら、その分だけで5億1800万円を受け取っていたことになる。もちろん、株価が上がるのであれば業績も悪くはないだろうから業績連動報酬なども受け取れる。

   株価を下げたことで、「自らも会社に対する責任を負っている」ともいえなくもない。小田切氏は「(ストックオプションでの報酬は)米国的な考え方ですね」と話す。

ストリンガー氏は第8位に後退

   東京商工リサーチによると、2011年の上場企業の役員報酬では8億8200万円で第2位だったストリンガー氏は今年、第8位まで後退した(6月28日現在)。

   前出の小田切尚登氏によると、「米国では社員の平均年収が500万円としたら、トップは10億円くらいもらっていても不思議ではありません。それを考えると、(ソニーの規模であれば)妥当なところかもしれません」とみている。

   ただ、問題は「どのように決められたか、にある」という。「米国でも最近この点を重視する傾向にあります。たとえば業績悪化したのだから半分程度でいいだろう、といったような慣例というか、惰性で支払われているのであれば最悪。外国人役員が増えるなかで、とかく日本人は『これがグローバルスタンダードなんだ』などといわれると、それだけで萎縮してしまい応じてしまいかねない」と指摘する。

   業績が悪化したときのトップの報酬はどれくらい下げるべきなのか。いまや超一流企業の経営陣にとって、他人事ではない。ストリンガー氏のケースは、一つの「前例」にもなりかねないだけに議論を呼ぶことになりそうだ。

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