「ブーム再到来」で評価高まれば商品も増える
前原氏は、「出版社にとっては、販路が広がるなら『店』がどこでも構わないと考えるでしょう」と話す。対するアマゾンや楽天は、競合相手に先んじて自社の端末やコンテンツだけを売りたい、ほかの店では売らせたくないと思うだろう。その点で出版社側とは契約交渉の席で「せめぎ合い」があったと想像できる。一方で消費者にとっては、2社の参入でコンテンツの拡充が加速するのではとの期待が広がる。
国内市場全体を考えたときに、コンテンツ自体はゆっくりとしたペースで増えている。ただし、消費者が実感できるほどのインパクトが足りないようだ。出版社側は「確実に売れる商品」に注力して電子化する傾向にあるため、一部のジャンルでは前年比1.5倍ほど点数が増えているものの、全体で考えると「爆発的な盛り上がり」につながっていないのかもしれない。
電子書籍ストアを開設しても、いったん消費者から「取り扱い点数が少ない」と認識されると、その後の利用が広がらなくなってしまう。これまでもソニーのように、電子書籍販売サイトと専用端末を持つ事業者はあったが、いまひとつ力不足なのはこれが一因のようだ。買いたい本が少ないのに、「タブレット型端末と違って『読書専用』でしか使えない端末を購入する人は少ないでしょう」(前原氏)。
アマゾン、楽天という強力なプレーヤーの登場で「電子書籍ブーム」が再到来し、「試しに読んでみよう」という人が増えたとき、「利用者側の評価が高まってコンスタントに書籍や端末が売れるようになれば、出版社側も商品ラインアップを増やしていくでしょう」と前原氏は予測する。逆に「ガッカリな結果」をもたらせば、市場が沈滞する恐れもはらんでいる。