財務省には「禁酒令」も
軽減税率には具体的に(1)非課税の適用、(2)免税か仕入れ控除ありという二つのタイプがある。(1)は消費税アップによる仕入れ価格アップだけコスト増となるだけでメリットがない。このタイプの業界として医療があるが、めざとい新聞業界はその轍を踏まないだろう。(2)は仕入れコストアップも控除でき、場合によっては輸出業者のように税還付を受けられるかもしれない。輸出依存が大きい大企業が消費税増税に文句を言わないのも理由があるのだ。おそらく新聞業界はしっかりと(2)を求めてくるだろう。
新聞業界が軽減税率を求めているのは前から知っていたが、財務省との関係では、2010年11月、前財務次官の丹呉泰健氏(59)が読売新聞に天下ったころから、かなり煮詰まっているなと感じた。
新聞業界も喜んでいるが、財務省も同じだ。26日の衆議院本会義の採決後、財務省内では安堵感が漂っているという。そんな悲願目前で緩みを警戒して、省内で「禁酒令」がでているようだ。また「白い歯も見せないように」と笑顔も自粛されているという。軽減税率は、個別物品ごとの租税特別措置であるので官僚利権になる。酒飲んで笑いたくなるだろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。