日本航空などが出資する格安航空会社(LCC)、ジェットスター・ジャパンが2012年7月3日就航し、成田国際空港を拠点とするLCCが初登場する。3月に関西国際空港を拠点に就航した全日本空輸系のピーチ・アビエーションは絶好調で、8月1日には同じく全日空系のエアアジア・ジャパンも成田を拠点に就航する。本格的LCC時代が始動するのを前に、LCC各社の運賃競争が早くも激化してきた。
エアアジアとジェットスターが同路線運航
エアアジアは5月30日、東京都内で記者会見を開き、成田と札幌、福岡、那覇を結ぶ3路線の運賃を発表した。最低運賃は成田-札幌線で4580円、成田-福岡線で5180円、成田-那覇線で6680円。
この3路線はいずれもジェットスターと競合し、ジェットスターが4月中旬に発表した就航時の運賃を下回っていた。記者会見でその理由を質問されたエアアジアの岩片和行社長は「他社より安いのは偶然だ。我々の競争相手は競合他社ではなく、私たち自身のコストだ」と述べ、自信に満ちた表情を浮かべた。
しかし、それから数時間後の同日夕、ジェットスターが突然、「当初予定より最低運賃を引き下げる」と発表した。値下げを決めたのはエアアジアと競合する3路線。成田-札幌線の最低運賃を当初予定の4590円から4490円に、成田-福岡線を5590円から5090円に、成田-那覇線を6990円から6590円とし、いずれもエアアジアの最低運賃より安価な価格にした。
運賃競争は既にピーチも巻き込んで激しさを増している。ジェットスターは4月中旬の運賃発表で、ピーチと競合する関西-福岡線の最低運賃を3590円とした。ピーチの同路線の最低運賃は3780円だったため、ピーチはジェットスターが就航する7月から、同路線の最低運賃をジェットスターと同額に引き下げることになった。
安全性は大丈夫なのか
コストを徹底的に削減することで実現する「低価格」が、LCCにとっては最大の売りだ。ユーザーにアピールする最大の武器である運賃で他社より見劣りすれば影響は大きく、「後出しじゃんけんのように、他社が発表する運賃が自社より低ければ、さらに引き下げを検討せざるを得ない状況」(関係者)になっている。
航空機の国内線運賃は2000年の航空法改正で認可制から届け出制に緩和され、自由化された。航空会社が自身で決めた運賃を国に申請すれば、その日のうちに承認されることもある。そんな自由な競争環境がLCC台頭を招き、激しい価格競争にもつながっている。
ただ、「LCCが運賃を下げれば下げるほど、『安全性は大丈夫なのか?』という不安も増している」(関係者)との声もある。そもそも航空の安全基準は大手もLCCも同じで、LCCが安全面で劣る事実はないが、「安全性のアピールもLCCにとってはいっそう重要な任務になっている」(関係者)との指摘も強まっている。