マツダの山内孝社長が報道各社のインタビューで、同社独自のロータリーエンジンを電気自動車(EV)の発電機として活用する考えを示し、反響を呼んでいる。マツダは世界で唯一実用化したロータリーエンジン車の生産を6月で終了するが、姿を変えてロータリーエンジンが生き残ることになる。独アウディもマツダと同様、補助発電機にロータリーエンジンを搭載したEVの開発を進めており、ロータリーエンジンがEV開発でにわかに脚光を浴びている。
これまでの技術蓄積を生かす
マツダが開発しているロータリーエンジンは、従来のようにタイヤを直接駆動する動力としてではなく、EVの電池が不足した時に限り、発電機としてロータリーエンジンを起動し、EVに電力を供給するものだ。燃料はガソリンではなく、水素を利用するという。マツダはこれまでも水素を燃料とし、環境負荷の低いロータリーエンジンを開発・研究してきており、この技術蓄積を生かそうというものだ。
報道によると、水素燃料のロータリーエンジンを搭載したEVは、来年にも企業や自治体にリース販売する方針というから、かなり開発は進んでいるとみられる。
ロータリーエンジンをEVの発電機に用いる次世代車の開発は、独アウディも進めている。アウディは「Audi A1 e-tron」を既に開発し、昨秋は日本の箱根でアジアのメディア向けに試作車を公開した。敢えて過酷な箱根でテストドライブを行ったことでもわかるように、ロータリーエンジン搭載のアウディのEVはパワフルかつ静かで、実用レベルに近づいている。とりわけ、ロータリーエンジンの静粛性は注目を浴びた。
補助エンジンで走行距離を伸ばす
アウディはロータリーエンジンを補助的な発電機に用いることを「レンジエクステンダー」、つまり走行距離を伸ばすための装置と呼んでいる。この発想はマツダと同じだ。現在のEVは1回の充電で走ることができる距離が限られるが、補助エンジンで発電できれば、走行距離を伸ばすことができる。
アウディによると、搭載するロータリーエンジンは254ccと小型で、5000回転で15KW(20ps)を発生する。A1 e-tronは電気モーターのみで50キロの走行が可能。ロータリーエンジンを使って充電すれば、最大250キロまで伸びるという。言うまでもなく、ロータリーエンジンは、レシプロエンジンのようにピストンの往復運動ではなく、ローターの回転運動によって動力を取り出すため、一定の回転数を保ちながら発電機を回すには都合がよい。燃費がレシプロエンジンに比べて劣ったとしても、補助発電機としては軽量コンパクトで高出力、静かという、ロータリーエンジンのメリットの方が大きいのだろう。
アウディの市販は未定だが、ロータリーエンジンが姿を変え、日欧でEVの補助エンジンとして登場する日は、そう遠くはなさそうだ。