条件が厳しいと企業が来ない
とりわけ、兵庫県や伊那市が、撤退による返還を想定した規定を設けていなかったように、「企業性善説」ともいえるような自治体の甘さも目立つ。
内閣府のまとめでは、2005年時点で補助制度を持つ43道府県のうち、撤退時の返還制度を設けていたのは25道府県だけ。最近はそうした制度は整備されつつあるが、「条件を厳しくしすぎると進出してくれない心配がある」と及び腰の自治体も少なくない。大阪府のように、要件を満たせば原則として補助金を交付してきたのを、「審査制」として、経済効果などを見極めて判断する方向に動く例もあるが、「立地条件がいい大都市、大工業地帯だからできる」(地方の自治体関係者)との声も聞こえる。
「自治体は優秀な人材育成など補助金以外に魅力を高める努力こそ必要」(コンサルタント)というのは正論とはいえ、即効性を考えると補助金頼みを抜け出すのは容易ではなく、自治体の苦悩は続きそうだ。