レンタルサーバーで「大規模障害」 重要データが消失、企業に衝撃走る

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   レンタルサーバー事業を手掛ける「ファーストサーバ」のサービスに障害が発生した。ウェブやメールが利用できなくなり、ウェブのデータは一切復旧していない。バックアップも機能していない模様だ。

   対処法としてサーバーは初期化され、消失データの復旧に努めているがどの程度戻るかは不明だ。

データ復旧「お約束できる状況にない」

サイト上でサーバー障害を告知するファーストサーバ
サイト上でサーバー障害を告知するファーストサーバ

   「ファーストサーバ」のレンタルサーバーで障害が発生したのは2012年6月20日。ウェブやメールが利用できなくなった。この日の夕方以降、「メールが見られない」「物販サイトなのにつながらないなんて」といった書き込みが少しずつ増えていった。最初のアナウンスから3、4時間経過してもファースト社から詳しい説明が出なかったため、「状況報告が遅い」といらだつコメントも出てくる。だが問題はすぐに解決しなかった。

   日付が変わって21日の深夜3時30分、ファースト社は顧客のデータが消失したと発表。原因は「メンテナンス作業において用いる特定の管理プログラムにバグ」があったためとし、作業を進めた結果「サーバーを初期状態に戻」してサービスを再開するとした。ここから可能な限りデータを復旧するそうだ。

   サーバー上にアップされたデータや、メールボックス内の一部データ、さらにデータベースも消失したと説明している。障害発生後のメールは受信できていない。現時点では、復旧の可否や復旧の度合いについて「お約束できる状況にはなく、長期間を要する可能性」もあるという。

   障害が起きたサービスの中には、企業内でスケジュールや勤怠管理、情報共有を目的に使われるグループウエアや、インターネット通販サイトの運営支援も含まれる。サーバーが初期化されたうえ、仮に消失データが元に戻らないとなれば、ネット通販業者にとっては顧客データをはじめ営業の根幹をなす情報が消滅した恐れもある。

   被害はファースト社の顧客企業に広がった。小林製薬は6月21日、商品のブランドサイトや携帯サイトが多く閲覧できない状態になっていると発表。同社広報に取材すると「22日中をメドに全面復旧にこぎつけたい」と話した。「ファースト社に対して補償を求めるか」との問いには、「現時点ではサイトをすべて再開させることが先決」とこたえるにとどめた。東京・新宿にあるライブハウス「新宿ロフト」を運営する「ロフトプロジェクト」のサイトは、現在もテキストのみのサイトで「仮運営」している状態だ。

バックアップまでもが失われる?

   サーバーに障害が発生しても、通常ならデータのバックアップがあり、最新の情報が保管されていれば復旧にもここまで手間取らないはずだ。ファースト社の発表では、同社の「管理領域内」にも「損傷が認められ」とあることから、バックアップまでもが失われ、最後の手段として初期化せざるをえなかった、ということだろうか。

   情報システムに詳しい数人に聞くと、サーバーの障害で初期化まで行きついたうえバックアップも消失したとみられることに、一様に驚きをみせた。そもそもバックアップのデータは、万一を見越して別のサーバーや安全な場所に保管しておくはずなのに、同時に消えてしまうとはありえない対応というのだ。外部サーバーを使っている会社によっては、常に最新データのバックアップを自社サーバーに保管してリスクをヘッジするところもある。

   だが、ユーザー数が5万に達し、うち企業や官公庁の契約割合が8割、「稼働率100%」をうたうファースト社を信頼して、データ運営を任せていた利用者は少なくないだろう。

   ファースト社のフェイスブックページやツイッターには、「顧客データが飛んでいる」「設定値がすべて消えた」「通販サイトなので売り上げに影響が出るので大変困っています」との嘆きが寄せられた。問い合わせ用の電話がつながりにくいことも「対応が悪い」として利用者の怒りに火をつけている。

   現在もファースト社側でデータ復旧に全力を挙げており、作業によっては状況が好転するかもしれないが、障害発生から2日がたった6月22日夕方現在でもウェブデータは一切復旧していないと発表されたままだ。J-CASTニュースではファースト社に詳細を確認しようと何度か電話取材を試みたが、一向につながらない。メールで質問を送付して回答を促したが、こちらも22日夕までに連絡はこなかった。

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