独スポーツ用品大手のアディダスが2012年8月に売り出そうとしていたスニーカーに米国で批判が殺到し、6月18日発売中止が発表された。
奇抜なデザインが「奴隷制度を連想させる」とされ、製品写真が掲載されたフェイスブックのページが「炎上」。不買運動の呼びかけが相次いだ末の出来事だった。ただし、「ソーシャルメディアが、かえってアディダスを救った」との声もあがっている。
デザイナーは奇抜なデザインで有名
問題とされたスニーカーは、アディダスのブランド「アディダス・オリジナルズ」から発売が予定されていた「JSラウンドハウスミッド」と呼ばれる製品。足首の部分に、オレンジ色の「足かせ」のような飾りが鎖で繋がっているデザインだ。
デザインを担当したのは、デザイナーのジェレミー・スコット氏。奇抜なデザインで有名だが、アディダスは「とっぴで、愉快だ」などとして歓迎していた。
このデザインは数ヶ月前には明らかになっていたが、その時点ではほとんど反響はなかった。ところが、6月14日になって、スニーカーの写真が「アディダス・オリジナルズ」のフェイスブックページに掲載ざれ、騒ぎが広がった。
現時点で、4200件以上のコメントが寄せられており、その多くが、デザインが奴隷制度や、鎖で繋がれた囚人を想起させるなどと非難するものだ。アフリカ系米国人から寄せられた批判も多いようで、不買運動を呼びかける人も続出している。
このため、アディダスも釈明に追われた。アディダスが米メディアに寄せたコメントでは、
「デザインは、デザイナーの斬新で独特なファッションに対する解釈以上のものではなく、奴隷制度とは何の関係もない」
と説明。フェイスブックのページには好意的な意見と批判的な意見の両方が寄せられたというが、
「デザインで不快な思いをした方がおられるのであれば謝罪したい。(問題となった製品を)市場に出す計画は撤回する」
として、問題のスニーカーは「お蔵入り」することになった。
「炎上」で在庫リスクを事前に回避?
今回の騒動は、いわゆる「炎上騒ぎ」のひとつとして片付けられてしまいそうだが、USAトゥデー紙では、やや違った見方をしている。同紙では、オンラインメディアやソーシャルメディアがアディダスを救ったかもしれない、とするスポーツビジネスコンサルタントのコメントを紹介している。このコンサルタントによると、インターネットが登場する前であれば、
「新聞や雑誌に写真が載って、(その時点で)製品は店に届いていただろう。そして、アディダスは大量の在庫を抱えることになるだろうし、(発売までに)多くの広告費を投入していただろう」
というのだ。「炎上」が製品の生産が本格化する前に起こったことで、結果的にこれらの被害を回避できた、というわけだ。