金融庁・監視委はどこまで本腰か
2010年は、株式市場が前年までの停滞から反転復調し、企業の大型増資が集中した年。1件当たり数百億円から最大1000億円を超える大手企業の増資では、仮に買い受け先が見当たらなければ証券会社自身が抱え込まなければならないリスクがある。このため、公募前に機関投資家に「投資の意向」などを確認した上で公募時期などを決めることは日常的に行われているというのが「業界の常識」。金融庁・監視委が主幹事証券の責任追及にどこまで本腰を入れているのか、測り兼ねる声が一部にあるのも事実だ。
だが、金融庁の幹部は最近も「野村に自浄作用はあるのか。うやむやにはさせない」と強調している。同庁内には、2008年に就任した渡部社長が、米リーマン・ブラザーズの欧州アジア部門の買収がその後の欧州債務危機で思い通りの成果を上げず、業績の低迷を招いたにもかかわらず、経営責任をあいまいにしてきた、との不満も根強く残っているという。
野村からの情報提供で、運用担当者がみずほフィナンシャルグループ(FG)株を空売りしたインサイダー取引で監視委の処分勧告を受けた旧中央三井アセット信託銀行(現三井住友信託銀行)は今月、運用担当者が野村証券の営業担当者から計121万円の接待や贈答を受けていたとの社内調査結果を発表した。運用担当者2人が懲戒解雇となったほか、常陰均会長(三井住友信託銀社長)らグループの幹部22人の報酬の1~5割を1~5カ月間カットする社内処分も決めた。
一部の大口投資家だけを利するこうした行為に対し、投資家の信認が揺らぐことは避けられないだろう。野村グループ内では「1991年の損失補填や97年の総会屋事件以来の不祥事」との声もある。近く発表される調査結果に社内も戦々恐々としている。