連載「呻吟するギリシャ」第3回
ユーロ圏離脱はひとまず回避 それでも誰も楽観していない

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   緊縮財政の是非が争点となったギリシャの再選挙は、「緊縮派」の新民主主義党(ND)が勝利を収め、心配されたユーロ圏離脱の恐れはひとまず消滅した。

   結果によってはギリシャだけでなく、欧州や世界の金融市場の行方を左右するとみられた今回の選挙。「運命の1日」は乗り切ったものの、危機が去ったわけではない。

夜の街ではうっ憤を晴らすかのように大騒ぎ

投票所となったアテネ郊外の小学校。1日中有権者の出入りがあったが、長蛇の列ができることはなかった(写真提供:Gavriil Xanthopoulos氏)
投票所となったアテネ郊外の小学校。1日中有権者の出入りがあったが、長蛇の列ができることはなかった(写真提供:Gavriil Xanthopoulos氏)

   投票日前日の2012年6月16日夜、ギリシャ国内ではサッカー欧州選手権の結果にわいていた。1次リーグ敗退が濃厚だったギリシャがロシアに勝利し、劣勢をはね返して8強に進出したのだ。久々の明るいニュースに市民は酔いしれ、夜の街ではうっ憤を晴らすかのように大騒ぎを繰り広げた。

   だが世界中が注目した再選挙では一転、結果が出た後も「祝賀ムード」は抑え気味だ。確かにアテネ中心部にあるシンタグマ広場には、NDの支持者らが集まって勝利を喜んだ。だが比較的早い時間に大勢が判明したこともあり、J-CASTニュースの取材に応じたガブリール・ザンソピュロス氏をはじめ、大半は結果を冷静に受け止めていたようだ。同氏の場合も、住まいの外は静けさが保たれ、喜びの声を上げる群衆も見かけていない。

   週明けの18日に出勤すると、職場は「いつも通り」だった。同僚と選挙について会話を交わすが、ユーロ圏離脱が避けられてよかったといううれしさに浸る雰囲気は感じられない。誰も事態を楽観視しておらず、関心事は「連立政権がどうなるか」に移っていた。過半数に達しなかったNDは、野党第1党となる急進左派連合(SYRIZA)に次ぐ得票数をもつ全ギリシャ社会主義運動(PASOK)と連立を組むことが確実視されている。ザンソピュロス氏は「新政権にはもちろん期待するし、少しでもよい変化が生まれてほしい」と願う。

   市民たちは選挙結果に複雑な思いを隠さない。ロイター通信の記者は選挙の翌日、シンタグマ広場で街頭インタビューをしているが、結果を受けて「今までより状況は安定する」と期待を寄せる人がいる半面、「まだ平和が訪れたわけではない」と、決して安心していない意見もあった。

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