オウム真理教の事件で逮捕された高橋克也容疑者(54)が、教団の本を所持するなど、未だにマインドコントロールが解けていないことが分かった。教団主流派「アレフ」も信者が激増しており、関係者は事態を危惧している。
「逮捕されたのはカルマ(業)というやつだ」
高橋容疑者は、警視庁の調べにこう教団の言葉を使ったという。読売新聞が2012年6月18日に報じたものだ。
異常なまでのマインドコントロール
報道によると、逃走に使ったキャリーバッグからは、教祖の写真や10冊以上の教団本、説法テープまで見つかった。さらに、留置場で教団の修行である蓮華座を組み、マントラのような言葉をつぶやいているというのだ。
調べに対し、高橋容疑者は、「今でも教祖を信じている」と明かし、事件のことについて話すことを拒んでいる。
背景には、教団の異常なまでのマインドコントロールがあるようだ。
18日放送のTBS系「朝ズバッ!」によると、立正大学心理学部の西田公昭教授らが、そのカラクリを次のように明かした。
まず教団は、ヨガ教室を装うなどして、サークル感覚で勧誘する。そして、教義に関心を持つように仕向け、立ったり座ったりの修行を体験させる。次に、説法ビデオを流した暗闇の個室に監禁して生活させ、自分のことを考えられないようにする。教義に疑問を持てば、薬物や電気ショックを与えて心を支配してしまうという。
西田教授は、このやり方を「恐怖心を利用する悪質なもの」だとし、高橋容疑者が未だに信じているのもそのためではないかと推測した。
オウム事件では、林泰男死刑囚が逮捕後も瞑想や断食をしたり、北村浩一受刑者が4年経っても教組を信じていると明かしたりしている。西田教授は、高橋容疑者にとっては、17年間もの逃亡そのものが修行だったのではないかとも言っている。
江川紹子さん、事件再発を懸念
オウム真理教からは、「アレフ」と、上祐史浩氏(49)の「ひかりの輪」が分派しており、ともに事件当時の幹部が牛耳っているとされる。
公安調査庁の調べで、2派は、2007年に新しい信者獲得が56人だったのが、11年には213人に増えた。この年は、なんと前年より倍増もしているのだ。その結果、アレフが約1300人、ひかりの輪が約200人にまで信者数が膨れ上がった。
しかも、入信した6割以上が35歳以下というのだ。前出の「朝ズバッ!」では、地下鉄サリン事件被害対策弁護団事務局長の中村裕二弁護士が、20代以下の若者らは事件そのものを知らないとして、10年後には、この10倍ぐらいの組織になっている可能性があると危惧した。
2派で、15都道府県に32施設もがあり、各地で反対運動があるなど住民との摩擦が激化している。12年5月30日には、ヨガ教室をかたって金をだまし取ったとして滋賀県警がアレフ信者3人を逮捕する事態にもなった。しかし、アレフは、マスコミの取材を一貫して拒否するなど、事件を反省するそぶりが見られないままだ。
取材を続けるジャーナリストの江川紹子さんは、ツイッターで6月17日、「だんまりを決め込み、事件への反省のないまま麻原信仰を続け、被害者への賠償も放り出して施設を拡充し、詐欺的勧誘を続けている」とアレフを批判した。そして、「オウムの場合、教祖への帰依(信仰心,忠誠心)と事件への加担は分かちがたく結びついている」と今後への懸念を明かした。
また、ジャーナリストで参院議員の有田芳生さんは、15日のブログで、当局は2派とも同根と見ているとの見方を示し、「なぜ若者たちがオウム真理教のようなカルト(熱狂集団)に入るのか。地下鉄サリン事件から17年経過しても問題は解決していない」と指摘している。