まだまだ残る「規制」の壁
いずれにせよ、世界の成長センターであるアジアで、円と元という地域の2大通貨が手を携え、国際化を進め、使い勝手が良くなれば、これまでのドルでの決済が円や元での決済に置き換わっていく可能性がある。それがドル基軸体制を徐々に浸食することになるとみられる。
ただ、それもこれも、円・元取引が拡大していくのが大前提。直接取引スタートの日、為替手数料(銀行が提示する交換レートの売値と買値の差額)が1元あたり0.35~1銭程度で、従来取引とほとんど変わらなかった。これは、東京市場の人民元の取引量が、ドルの2000分の1に過ぎないため、銀行は人民元を安く調達できず、手数料を引き下げられなかったためという。
日中貿易の決済は現在、ドルが6?7割を占め、人民元は1%に満たない。人民元比率が徐々に高まって行くのは間違いないだろうが、レートが本当に市場取引で自由に決まるのかの疑問も消えない。
ドルと人民元は香港で直接取引されているが、値幅制限が設けられている。円・元直接取引も、東京は自由な取引なのに対し、上海市場はこちらも値幅が制限されている。この"ねじれ"のため、例えば東京の円・元相場が乱高下して3市場間の水準に大きな差ができるなど、混乱しないとも限らない。「中国の株式投資への外資規制など資本の流出入に残る制限も含め、中国の規制の壁を下げていくことが不可欠」(エコノミスト)との指摘は多く、まだ課題は山積のようだ。