オウム真理教による1995年の地下鉄サリン事件に関連して、殺人と殺人未遂容疑で警視庁に特別手配されていた元信者の高橋克也容疑者(54)が2012年6月15日朝、東京都大田区西蒲田の漫画喫茶で発見され、警視庁に逮捕された。
だが、そのわずか8時間前には、1駅離れたJR川崎駅の近くの住宅街で「大捕り物」が行われ、ユーストリームで生中継されていた。3万人もの視聴者が捜査の様子を見守ったが、結局は空振りに終わってしまった。
高橋容疑者が身柄を確保されたのは、JR蒲田駅近くの漫画喫茶だ。高橋容疑者は、この漫画喫茶の割引券を持っていたことから、過去にも、この漫画喫茶を利用したことがあるとみられる。
警備員が笛鳴らしながら「道をあけてください!」と叫ぶ
ところが、警視庁の捜査の焦点は、別のところにあったようだ。6月14日23時50分ごろ、突然ユーストリームで「高橋容疑者 これから逮捕 川崎」と題した動画の配信が始まった。
高橋容疑者が潜伏していると見られるマンションの捜索が計画されていたようで、動画では、住宅地の道路に大勢の野次馬が集まり、黄色い反射材付きの制服を着た警備員や警察官が、笛を鳴らしながら「道をあけてください!」と叫んでいる様子が映し出された。ラフな服装の人も多く、近隣住民が騒ぎを聞きつけて集まってきたことが分かる。
背景に映り込んでいた商店の看板から、現場も特定された。住所で言えば川崎市幸区中幸町4丁目付近で、現場はJR川崎駅の北東にあり、道なりに歩いて約800メートル、徒歩10分の場所だ。「高橋容疑者は川崎駅付近に潜伏している」というここ数日の情報を裏付けた形だ。
動画の存在はツイッターなどで広く知られるようになり、視聴者数が急増。日付をまたいだ15日0時半には頃には3万人が突破した。電波状況が悪いからなのか、0時35過ぎには配信が途切れたが、直後にはタイトルを「高橋容疑者逮捕まだ?」に改めて中継が再開された。この頃には報道陣の数も増え、カメラのライトの光が、かなり目立つ状態に。朝のワイドショーに出演している有名レポーターの姿も確認できた。
映し出されるのは野次馬ばかり
だが、画面に映し出されるのは、やはり野次馬が集まり、それを整理しようとする警察官や警備員の姿ばかりで、動画の視聴者からは
「こんだけ野次馬がいたら、何が起きてるかさっぱりだなw」
といったコメントも寄せられた。まもなく、この動画の配信も途絶え、0時50分頃には別タイトルで配信が再開されたものの、この動画も1時には途切れた。このらめ、視聴者からは
「一体何だったんだ」
「ガセなのか」
といった声が続出したが、約15分が経過して、共同通信が、
「川崎のマンションに潜伏情報 発見できず、一帯騒然」
と題した記事を配信。捜査が空振りに終わったことが明らかになった。