連載「呻吟するギリシャ」第1回
若者の2人に1人が失業する そんな国に誰がしたのか

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国民を裏切った与党よりも期待が持てる

アテネの中央魚市場。通常より客足は少ないが活気はある(写真提供:Gavriil Xanthopoulos氏)
アテネの中央魚市場。通常より客足は少ないが活気はある(写真提供:Gavriil Xanthopoulos氏)

   2012年6月17日に行われる再選挙に向けて、緊縮財政の維持を訴える新民主主義党(ND)と、脱却を掲げる急進左派連合(SYRIZA)の支持率が直前まで拮抗している。SYRIZAが与党となった場合は「緊縮策を破棄してユーロ圏から脱退するのではないか」とささやかれている。

   投票日間近となった今も、「どの党が勝つのか予想が難しい」とザンソピュロス氏。数年来の経済の低迷で、政権の中枢を担っていたNDや全ギリシャ社会主義運動(PASOK)のていたらくぶりに国民が失望したことが、政治混乱の原因だと言う。NDは「経済成長」のためとばかりに公共投資を頻発して巨額の財政赤字をつくったうえ、隠ぺいした「戦犯」で、政権を引き継いだPASOKは、経済立て直しに無策のままEUやIMFの過酷な緊縮財政を「丸のみ」したとみられているようだ。5月の選挙におけるSYRIZAの躍進は、この2政党に強烈な「ノー」を突きつける意味合いが込められていたという。

   今回の選挙戦でも、NDとPASOKは有権者を納得させる国の将来像を提示できていないと指摘する。今ごろになって、2月にEUやIMFと結んだ金融支援策の見直しを口にし始めた、とあきれ気味だ。緊縮策の続行を訴えてきたはずが、公約を捨てようという動きなのだろうか。

   一方SYRIZAは、未熟さは否めないが、ここにきてツィプラス党首の演説内容を聞くと「以前よりもバランスの取れた、現実路線を進んでいる印象を受けた」と評価。緊縮策撤廃を掲げる一方で、EUやIMFとの「条件緩和交渉」をちらつかせ、「ユーロ圏残留」を視野に入れる。国民が「裏切られた」と感じているNDやPASOKよりも期待が持てるというわけだ。しかしギリシャの政界には、極右を含め複数の少数政党が存在しており、単独与党になれない以上はどこかと連立を組むしかない。SYRIZAは挙国一致内閣の提案を退けているため、別の政党と連立すれば政権公約に多少の変更が出る可能性もある。何よりも、政権運営能力は未知数なうえ、課題は山積している。

   ザンソピュロス氏の話には、平穏な生活が崩されて出口の見えない耐乏生活を強いられるようになった多くのギリシャ人が抱える怒りが代弁されているようだった。

「自分たちは正直に、必死に生活を営んできた。それでも誤ったギリシャ人像が世界中で語られている」
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