兄弟姉妹については福祉事務所が扶養の可否を尋ねる
最近でも、識者らの間から、扶養義務を厳格に適用すれば貧富の差が固定化してしまうなどとして、欧米先進国並みに親族の扶養義務を課さないようにすべきだとする主張が出ている。
実際、福祉事務所では、親族の扶養義務をどこまで求めているのか。
厚労省の保護課によると、直系血族と兄弟姉妹については、民法上は「絶対的扶養義務者」とされ、福祉事務所がほとんどの場合、扶養の可否を尋ねる扶養照会をするそうだ。直系血族とは、曾祖父母から曾孫までを指す。ただ、高齢の曾祖父母のような場合は、現実的ではないとして、照会しないこともあるとした。
一方、それ以外の3親等内親族は、「相対的扶養義務者」とされ、保護課では、「全員ではなく、援助してもらうことが期待できる人だけを照会しています」と言う。それは、過去に援助していたか、現在も援助している人のことを指す。3親等は、おじおば、甥姪ばかりでなく、妻の曾祖父母などかなり幅広い関係まで含んでしまうからだ。
結局、親族への援助要請は、福祉事務所の裁量に委ねられる、かなりあいまいな部分が多いようだ。
厚労省が全国の福祉事務所60か所を2007年度に監査したところ、福祉事務所が扶養照会したうち、実際に部分的でも親族が援助していたケースは、わずか2.7%だった。親子でさえも援助を拒むケースが多いとみられ、今後は、扶養義務のあり方について根本的に考え直す必要がありそうだ。