楽天の三木谷浩史社長が会長を務める新たな経済団体「新経済連盟」(新経連)が2012年6月1日発足し、波紋を広げている。三木谷社長は昨年6月、ツイッターで「(経団連の)電力業界を保護しようとする態度が許せない」などと批判し、経団連を退会した経緯がある。
新経連という名称からも、経団連に対抗する意図があるとみられるが、三木谷会長は「経団連に対抗する気はない。先輩はリスペクトしながら、新しい提案をしていきたい」と述べるなど、「第2経団連」発足との観測を否定するのに躍起だった。
既存の財界3団体とは差別化
新経連はネット関連企業を中心に2010年に設立した「eビジネス推進連合会」が名称変更して誕生した。同連合会には楽天、オールアバウト、カカクコム、ディー・エヌ・エー、グーグルなどネット関連企業だけでなく、電通、富士通、三井物産、近畿日本ツーリスト、三菱東京UFJ銀行など、幅広い業界から約779社が加盟。ネットビジネスにかかわるカタカナ表記の新興企業が多い。一部は経団連の会員企業と重なっている。
三木谷会長は会見で「経済団体という意識はある。(経団連など財界3団体と)横並びでなく、新しい基軸を考えている。イノベーションを軸に政策提言していく経済団体と考えている」と述べ、既存の3団体とは差別化を図る考えを強調した。
新経連は「インターネットは今や社会を支える重要なインフラのひとつ。ネットおよびeビジネスの拡大、新産業の育成を通じた日本の競争力強化を目的に、民間の立場から各種提言や情報提供を実現していく」という。三木谷会長は会見で「(ネット関連企業は)ものごとの見える景色が違うので、政策も変わっていくと思う」と述べ、重厚長大型産業が主流の経団連を暗に批判する一幕もあった。
新経連の会員企業には、TBSテレビも含まれる。楽天は2005年10月にTBS株を大量取得し、経営統合を提案。TBSが提案を拒否し、2009年まで攻防が続いたが、最終的に楽天がTBSに保有株の買い取りを請求し、事実上、敗北した経緯がある。TBSテレビが加盟していることに質問が及ぶと、三木谷会長は「Most Welcome.たいへんよいと思う」と述べるにとどまった。
具体的な政策提言について、新経連は「国民の政治参加の促進や行政プロセスの効率化、地方の活性化などを建設的に議論したい」としている。三木谷会長は「ネット選挙、選挙運動のネット解禁は大きな政策のひとつだ」などと述べ、国内の政治家の選挙運動や有権者の投票にネットを活用する考えを示した。今後の具体的な政策提言が注目される。