「発言のブレ」で物議を醸すことの多い鳩山由紀夫元首相が、野田政権に反旗を翻すともとれる発言を連発している。原発の再稼働に事実上反対する署名に協力したり、民間出身の森本敏防衛相の起用に疑問を投げかけたりもした。さらに、民主党からの離党すらほのめかすなど、民主党にとっては不安定要素だと言えそうだ。
森本防衛相は「選挙の洗礼を経ないでいいのか」
第2次野田改造内閣は2012年6月4日夕方に発足したばかり。ところが、この3日ほどで、鳩山氏の動きが活発化しているのだ。鳩山氏が政府の方針に疑問を呈しているのは、すくなくとも3つある。
一つが、安全保障だ。改造内閣では、鳩山政権で迷走した米軍の普天間飛行場移設問題を強く批判してきた森本氏が、民間人としては初めて防衛相に就任している。鳩山氏は、この点について、6月5日のグループ会合で、
「ミサイルのスイッチを入れる権限を有する方が、選挙の洗礼を経ないでいいのかという議論も出てくる。しっかりやらないと、相当厳しい国民の批判を受けるのではないかと心配している」
と批判している。なお、森本氏は、6月6日夜に出演したTBS「ニュース23 X(クロス)」恒例の質問コーナーの中で
「鳩山総理の要請なら、大臣は受けなかった?」
という問いに
「受けなかったと思います」
と即答。両者の溝の深さを印象付けた。
テレビ番組で離党を示唆?
二つ目が、関西電力大飯原子力発電所(福井県おおい町)の再稼働問題。5月31日か6月5日にかけて、再稼働について「なお一層慎重に判断することの要請」と題した署名の呼びかけが行われ、民主党所属議員の約3割にあたる117人が署名している。そのなかに、鳩山氏や小沢一郎元代表も含まれている。
三つ目が、野田首相がことあるごとに「政治生命をかける」消費増税の関連法案。野党との修正協議に向けて調整が進んでいるが、鳩山氏は6月6日夜、
「マニフェストを全部捨てるとなれば、飲めない」
と発言。自民党は、民主党がマニフェストで掲げていた最低保障年金の撤回を求めているが、民主党執行部がこれを受け入れた場合、造反する可能性を示唆したものだ。
一連の発言は、自らのグループの影響力を保つ狙いがあるものとみられ。6月6日に出演したテレビ番組では、
「民主党より国民の暮らしが大事だという立場から、どう行動すべきか考えねばならない時を迎えている」
とも発言。離党を示唆することで、さらにゆさぶりをかけた形だが、党を割るほどの決意かあるかどうかは不明だ。