切除された人間の男性器を食べるというイベントが東京、杉並区で行われ、国内外に衝撃を与えている。区は警察と協議して何らかの対応をする構えだが、過去に前例のない「事件」だけに頭を抱えている。
イベントは2012年5月13日夜、杉並区阿佐谷のライブハウスで行われた。これまで出ている報道などをまとめると「性器を食す世紀のイベント」という触れ込みで、芸術家の男性(22歳)が性器を提供。事前に切除し、冷凍保存していた自分の性器を会場で調理し、観客が食べるというものだ。
「固い!ぶ厚いゴムを噛んでるみたい」
男性は「絵描き」で、ゴシックな雰囲気の前衛的な作風が特徴。2年前から「(性別が)男性であるということが、私の人格や意志、思想、人生の目的において必要なのかどうか」と疑問を抱くようになったという。
その後、徐々に性器を食べるべきだと思うようになった。当初は自分で食べる考えだったが、術後の医療費を捻出するため、2012年4月、ツイッターに「私の男性器(完全陰茎+睾丸+陰嚢)の料理を10万円で提供します」と投稿してイベント実現に至った。
イベントには20代から30代を中心とした男女70人が参加。ステージの上で、コック姿の調理人が男性器をワインに漬けたあと、フライパンで調理。皿に盛りつけられ、男女5人に提供された。
参加者のブログには調理され、輪切りにされた男性器の写真が掲載されている。「断面を見ると、軟骨組織があり、その部分は白く、それ以外はピンク味がかった赤色です」「固い!ぶ厚いゴムを噛んでるみたい」と感想を綴っている。
杉並区「現行の法律ですぐに対応できるという事件ではない」
人体の一部を目の前で調理してみんなで食べるというイベントは開催前から話題になっていたが、5月下旬には、ハフィントン・ポストやAFP通信、ロイター通信を始めとした英語メディアのほか、仏語や中国語圏など世界中のメディアも相次いで報道した。
調理された性器の写真を掲載したショッキングな内容の記事もあり、海外のネットユーザーからは「マジで日本はどうなっているんだ!」「彼は病的だ。これにお金を払って食べようとする人はもっと病的」といった声が多数挙がった。
また、「日本では人肉食は合法なのか?」といった疑問もあった。これについては男性がイベント後ツイッターで説明している。
イベントでは、健康状態を精密検査した後、美容形成手術で摘出した「組織片」を、医師が「医療廃棄物の感染性一般廃棄物・感染性産業廃棄物でない状態」と確認した上で、冷凍保存したものを使用した、という。
当日の調理も調理師の調理・監督下にあり、調理物を食べた参加者には事前に、書面で意志確認していた。「このため、各種医療廃棄物処理法違反・食品衛生法違 反・臓器売買・傷害致傷・遺体損壊に寄与するものではありません。また当然、全ての当事者に於いてそうした意向もありません」としている。
杉並区はイベントを問題視し、5月中旬には保健所がライブハウスに立ち入って事実関係を確認。6月1日には田中良区長が「人体の一部を公開の場で食する催しを、参加者を募集し実行したことは大変遺憾で、許されるものではない。警察などと協議し、断固とした対応を取るよう検討する」というコメントを発表した。区民からも行政指導を求める声が寄せられているという。
ただ、過去に前例のないことだけに、どういう理由で指導するのかは判断が難しいようだ。区広報課は6日、J-CASTニュースの取材に対し、
「現行の法律ですぐに対応できるという事件ではない。衛生法上や人道的にどうなのかなど、あらゆる観点から今後の対応を考える」
と話していた。