菊地直子「携帯7台所持」の謎 「使い切り」で番号も変わるプリペイド?

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   オウム真理教の元信者、菊地直子容疑者が潜伏していた神奈川県相模原市の住居から、「櫻井千鶴子」名義のキャッシュカードや名刺に加えて携帯電話7台が見つかった。

   偽名で暮らしていた菊地容疑者が、契約時に本人確認のある携帯電話をどうやって入手したのか。7台という数はひとりで所持するには不自然で、その用途も謎だらけだ。

ネットオークションで不正入手の可能性も

どんな理由で7台持っていたのか(写真はイメージ)
どんな理由で7台持っていたのか(写真はイメージ)

   押収された7台の携帯電話はいずれも中古品で、ICカード(SIMカード)が抜かれたものだったと報じられた。このままの状態では使えないため、菊地容疑者が「収集家」でもない限りは、電話回線につながっている端末を持っていたと考えるのが自然だろう。最低でもひとつ契約していれば、機種によってはSIMカードを抜き差ししながら別の端末を利用できるからだ。

   だが携帯電話の契約には、本人確認が条件となる。例えばNTTドコモでは、契約者本人の運転免許証やパスポートなどの提示が求められ、健康保険証の場合はほかに公共料金領収証や住民票など他の書類を用意しなければならない。特別手配されていて本名を明かせない状況にあった菊地容疑者が、「正面突破」でこうした手続きに踏み切ったとは思えない。一方で、同居していた高橋寛人容疑者や第三者が、自分の名義で契約して菊地容疑者に渡した可能性はある。

   菊地容疑者本人が手配したのであれば、ある種の不正な方法を使うしかなかっただろう。例えばインターネットオークションに出品された、回線契約が残ったままの「黒ロム」と呼ばれる携帯電話を競り落とす。実際に今もオークションサイトによっては「黒ロム」の出品事例が発見できる。

   しかし携帯電話不正利用防止法では、携帯電話のSIMカードを携帯電話会社に無断で他人に譲渡、売買することを禁じている。通話ができる状態の「黒ロム」は当然、SIMカードが入ったままになっているので無断売買はご法度だ。だが違法性に目をつぶれば、菊地容疑者にとってメリットはある。出品者との直接のやり取りなら偽名でも構わないし、端末を送付してもらう際に自宅の住所でなく別の宛先を指定することもできる。

   それにしても、電話機を7台も持っていた理由が謎だ。回線契約なしの中古端末を買うだけなら、それほど困難ではない。だが、仮に1枚のSIMカードで複数の携帯電話を使ったとしても、あまり利点が見いだせない。モバイル通信分野に詳しい武蔵野学院大学准教授の木暮祐一氏に聞くと、「むしろ7台とも手元に置いておかざるをえなかったのではないか」との仮説を口にした。

電話機そのものはうかつに捨てられない

   木暮氏は、ひとつの可能性として菊地容疑者が所持していた携帯電話が「プリペイド方式」だったかもしれないと話す。契約の際には通常の携帯電話同様、本人確認が必要なので協力者の手を借りねばならない。基本料金が抑えられる半面、通話に必要なプリペイドカードの有効期間が過ぎると発信できなくなり、さらに一定期間更新しないと受信も不可能となって完全に使えなくなる。だが、ずっと同じ電話番号を使い続けて何かの拍子に「足」がつくのは避けたい当時の菊地容疑者にとっては、いざとなれば「使い切り」と割り切って別のプリペイド携帯を買えばよい。そうすれば定期的に番号を変えることにもつながり、かえって都合がよかったかもしれないのだ。

   一方で、電話機そのものはうかつに捨てられない。端末に発着信の履歴が残り、初期化しても復元できる方法もある。万一、他人の手に渡って通話履歴が漏れる事態となれば、逃亡中だった菊地容疑者にとっては「致命傷」になりかねない。「処理に困って何台も持っていたのでは」と、木暮氏は推測する。

   あえて第三者経由で7台すべての携帯電話を正規の方法で契約し、そのうち1台だけを使っていたかもしれない。ひとつの端末、電話番号しか持たないと、捜査の手が及んだ際に手掛かりとして絞りこまれやすく、例えば電源が入った状態であれば、発信電波をキャッチされるなどして特定されやすくなる恐れがある。複数の番号を持つことでリスクを分散しようとのねらいがあったのだろうか。

   報道によると、携帯電話の使い道について捜査関係者は「素直に第三者と連絡をとるため」とこたえたという。所持していた携帯電話の解析が進めば、17年の逃亡生活での人間関係が浮かび上がってくるだろう。

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