公取委に相談したことが親企業に見つかれば、取引を切られる
だが、実効性には疑問の声もある。97年の税率引き上げの際、公取委は価格転嫁の実態を把握しようと親企業1000社、下請け企業5000社にアンケートを実施。以来、追跡調査を毎年行い、2010年度は親企業の約3万8000社、下請け企業の約21万社に対象を拡大。調査で得た情報を手がかりに下請法を適用し、同年度は4226社を指導し、15社に勧告した。ただ、これらの数字は「氷山の一角」(中小企業団体関係者)というのが常識だ。
大手メーカーの下請けが多い金型メーカーでつくる「日本金型工業会」は、加盟企業が全体の1割程度で、「転嫁カルテルを結んでも効果は限定的」という声もある。
中小企業庁の2011年の調査によると、売上高1000万~3000万円の中小の64.5%が将来の増税時に「十分な転嫁はできない」と答えている。といって、「公取委に相談したことが親企業に見つかれば、取引を切られるから、下請け企業は公取委に出向こうとしない」(中小企業団体)。「中長期的には各企業が経営革新、イノベーションを起こすしかない」(上田清司埼玉県知事)というのは正論としても、税率アップまでの2年間に中小の足腰を強化するのは至難の業で、「倒産が激増する」(信用調査会社)との懸念は消えない。