さすがゴジラ、と日本のメディアが大騒ぎした。再び大リーガーとなったレイズの松井秀喜がカムバック最初の試合(2012年5月29日)でホームラン。さらに6月1日には特大の第2号を放ってパワー健在、と言いたいところなのだが、いつまでメジャーに残っていられるかどうか、まだまだ安心できない。
「甘い球」への対応力は健在のようだが・・・
復帰一発は見事な一打だった。相手投手は4月21日に完全試合を達成したホワイトソックスのハンバーだけに価値はある。
「しっかり打てたと思う」と松井はさすがにうれしそうだった。
しかし、その1球は、ストレートのホームランボールであって、むしろ打って当たり前。打ち損ねたらショックを受けるところだった。打てる球を逃さない松井は健在だったといえる。
ただ、変化球にはまだタイミングが合っていないように見える。やはりメジャーとファームでは変化の厳しさが違う。
レイズ昇格が決まったとき、松井は「まだ完全な状態になっていない」と現状を語っている。調整にもう少し時間がほしい、ということだったのだろう。3Aでの打率1割7分という数字がそれを示していると思う。
本人とっても「想定外」に早かったメジャー昇格
松井にすれば想定外に早いメジャーからの呼び出しだったはずだ。それはレイズの戦力がピンチに陥ったからで、外野手のアレン、ジェニングスといった主力が故障し、このままではア・リーグ東地区の首位争いについていけないと判断したのだろう。
松井という打者は調整さえしっかりすれば計算できるタイプである。最大の特徴は力の落ちる投手には絶対強いという点。これはどんな打席でもまじめに取り組むからで、お金を稼げる一番の要素を持ち合わせている。巨人、ヤンキース時代の活躍はそこにあった。
もう一つ、「短期集中型」という特徴があり、一定期間に爆発的な打撃を見せる。ヤンキース時代、故障を抱えながらワールドシリーズで猛打を振るいMVPを獲得したのが代表的な例だ。
現在の状態から推測すると、期待される打率での高い数字は無理だろう。打点をどのくらい挙げるかがポイントになる。
大リーグの勝負どころは7月、8月の真夏の戦い。ここでの勝利が秋に生き残れるかどうかにつながる。松井は夏に強いのだが、そこまで持つかどうか。成績が芳しくなければファーム落ちもあるし、37歳の年齢から解雇もある。
これから調整しながら調子を上げていく。「楽観的には考えていない」と松井は本音をもらしている。メジャーの厳しさを知っている者の話だ。ここでの故障は命取りになる。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)