橋下徹大阪市長の敗北宣言の真意  「夏だけ再稼動」なんてできるのか

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   原発再稼働に対し強硬に反対していた橋下徹大阪市長が、ついに白旗を上げて、再稼働容認に転じた。夏だけの期間限定を強調しているが、発言を何度も変えた過去があるだけに疑問の声も出ている。

「負けたと思われても仕方がありません」

   橋下徹市長は2012年6月1日、記者団の質問にさばさばとした表情でこう敗北宣言をした。

9月にも稼働をストップさせる意向?

   関西電力の大飯(おおい)原発3、4号機(福井県)について、橋下市長は、安全確認が不十分だとして、政府の再稼働方針に何度も不満を訴えていた。「次の選挙では、民主党政権には変わってもらう」ともぶちまけたほどだ。

   ところが、5月に入ると限定稼働もほのめかすなど、発言がトーンダウンしていく。それでも原則容認できないとの立場だったが、大阪市も参加する関西広域連合で30日に限定稼働を認める意見が表明され、橋下市長は翌31日に事実上の容認宣言をした。

   その理由として、橋下市長は、政府が原子力規制庁設置による新しい安全基準作りに動き出し、電力自由化などの方向性も出てきたことなどを挙げる。

   ただ、ストレステストの結果だけに基づく現状では、電力不足が深刻な夏だけに限定されると言っている。具体的には、9月にも稼働をストップさせる意向のようだ。

   こうした変わり身の速さについて、ネット上では、「いい落とし所」「まあこれはしょうがないだろ」などと理解を示す声もある。しかし、橋下市長が節電によって原発がなくてもいいことを示せるなどと説いていただけに、「原発無しを考える国民がチャンスだったのに」「原発反対派がこれまでいかに非現実的な主張しかしてなかったかが露呈したな」といった疑問も出ている。

   橋下市長が一転して再稼働を容認したのは、経済界からの意向が大きく働いたのではないかと見る向きが多い。

経済界からの意向も働いていた

   自民党大阪府連の関係者は、取材に対し、「もし計画停電などが行われるようになれば、企業に大きなダメージになります」と指摘する。

   大阪は、町工場などの物作りが盛んなことでも知られ、停電になれば大きな影響が出る恐れがある。「それで企業が大阪から出ていくことになれば、景気の底上げもできません。橋下徹市長が率いる大阪維新の会には、経済人も多く参加していますので、その声を聞き入れたのでしょう」

   また、民主党大阪府連の関係者は、同様な見方をしたうえで、こう批判した。

「彼は、不満を持っている人のネタをかき集めて、過剰にあおる手法ですからね。もともとムリだと分かっていたので、いずれそうなるだろうと冷ややかに見ていました。今は、老朽化した火力発電を無理やり稼働させている状態ですので、9月に原発稼働をストップさせるのも難しいのでは」

   橋本市長側も、立場は違うものの、経済界の意向があったことは認めている。

   元経産官僚で大阪府市統合本部特別顧問の古賀茂明氏は、テレ朝系「モーニングバード!」で2012年6月1日、こう明かした。

「関西電力が『この夏は大変ですよ』と各企業を回っているなかで、『計画停電もありますよ』と圧力をかけた。計画停電と聞けば企業としては何とか動かして欲しいとなる。首長さんによっては経済界のサポートで選挙を戦っている人もいて、首長らにかなり圧力がかかった」

   そこで、橋下市長は、夏の期間限定で再稼働を容認するという現実的な対応をしたというのだ。

   とはいえ、知事選出馬などで前言を翻すことも多かっただけに、政治的な駆け引きによっては今後も容認するのではないかとの見方も出ている。

   関西電力によると、原発の9月停止は物理的にはできるという。しかし、いったん立ち上げた原発については、継続して稼働させたいと言っている。

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