国家戦略として取り組む気があるか
ただ、こうしたメーカーの努力には限界があり、「国が国家戦略としてインフラ輸出の一つと位置付ける必要がある」(政府関係者)というのが関係者の一致した指摘。衛星ビジネスの最大のターゲットは静止衛星で、世界で年20機前後の需要があるが、今後、新興国などでも需要拡大するとみられる。現在は欧露が強く、米中も加わってシェアを奪い合う激戦区だ。
三菱は当面、モンゴルやチリなど新興国が計画する災害対策用衛星などを受注し、市場の一角に食い込みたい考えだが、そのためには、政府開発援助(ODA)の活用などに加え、単に衛星自体の性能、価格競争だけでない「ソフト面」の強みが欠かせない。
例えばアジア各国の気象観測などのための衛星のデータを提供しあい、観測の密度と精度を上げるなどの仕組み作りが検討されている。政府が構築を進めている日本から東南アジア、豪州までカバーする日本版GPS(全地球測位システム)を活用し、そのデータを提供してアジア各国を取り込むことも考えられる。中国は資源獲得をにらんで新興国向けに割安で衛星を打ち上げるといった文字通りの国家戦略で取り組んでいるだけに、日本ももたもたしている暇はない。
政府は近く「宇宙戦略室」(仮称)を設けるが、関係省庁の足並みはそろっているとは言えない。縦割りを排して、政府一丸、官民一体で取り組むことなしに、日本の宇宙ビジネスの未来はない。