競馬の祭典・日本ダービーが終わり、2012年6月からは早くも来年のダービー馬を目指す2歳馬がデビューする。しかし、レースを運営する日本中央競馬会(JRA)は勝馬投票券(馬券)の売上げ減少に頭を痛めている。
2011年度の馬券などの事業収益は前年に比べて、約1376億円減の約2兆3062億円。純損失は約63億4400万円と、54年ぶりに赤字に転落した。
売上げはピーク時の半分に
JRAによると、11年度は東日本大震災などに伴う特別損失として124億5700万円を計上。このうち、被災地への義援金で約50億円を拠出したほか、福島競馬場の復旧工事などの震災関連費用として106億円がかかったことが赤字につながった。
では、震災がなかったら赤字にはならなかったのだろうか――。JRAは「それはなんとも言えません。ただ、震災によって福島競馬が中止になったことが売上げの減少につながったこともありますし、福島競馬場の復旧費用などがかさんだことは事実です」と説明する。
売上げ不振の要因についてJRAは、「売上げの減少については厳しく受け止めています。ただ(売上げ減少の要因は)諸々あると思います。可処分所得の減少もその一つで、『レジャー』として競馬を楽しむ人が減ってきたようです」と話す。景気の後退や給与所得の低迷、少子高齢化なども要因とみている。
とはいえ、これまでJRAは「不況に強い」といわれてきた。競馬ブームに火をつけた「芦毛の怪物」オグリキャップが引退したのが1990年12月の有馬記念。バブル経済の崩壊はその翌年のことだ。
景気は急激に悪化したが、JRAは「別格」だった。この年に、1着と2着の馬を当てる「馬連」を投入して、いわゆる万馬券が「量産」されるようになったことで、射幸心を煽られたファンは馬券を買い求め、JRAは売上げを伸ばした。
96年の有馬記念の売上げ875億円は1レースの売上世界一で、ギネスブックにも載っている。4兆6億円を売上げた97年度は、JRAの絶頂期だった。
2011年度の売上げ、2兆3062億円は、ほぼ半分まで減ったことになる。JRAは、経費節減はもちろんだが、「レースの質を上げる」ことがファン獲得の決め手と考えているようだ。