日本国内で、芸能人の親族による生活保護受給について議論が巻き起こる中、海外で「もらい過ぎではないか」と批判にさらされる家族が登場した。
英国で10人の子どもを抱える夫婦が、600万円相当の生活保護を受け取っているという。なぜこんなことが可能なのか。
5つのベッドに広々とした庭のある家に住む
「5万ポンドの生活保護を手にする夫婦」として、英大衆紙「デイリーメール」電子版の「メールオンライン」や「クローサー・マガジン」が2012年5月30日までに大きく報じたのは、英国在住のイアン・シャープさんとその妻ステファニーさんの一家だ。2人の間には7人の子どもに加えて、ステファニーさんと前夫との間で生まれた3人の子どもがいる。
イアンさんは持病の頭痛がひどく、仕事ができない状態で20年間無職だ。一方のステファニーさんは現在、週40時間をリサイクルショップでのボランティア業務に当てている。ボランティアなので収入はゼロ。生活保護の支給額の方が、仕事で得られる収入よりも高いと考えての行動だ。
一家には毎年、子ども手当や住居手当などが支給され、税額控除や地方税の優遇も受けられる。総額で年間約5万ポンド(約610万円)に達する計算だ。クローサー誌によると、2011年2月にはそれまで住んでいた公営住宅から、民間経営の広い住居に引っ越したという。5つのベッドが置けるうえ広々とした庭があり、ガレージにはワゴン車が駐車してある。
「無職」でありながら一見ぜいたくにも見える暮らしぶりだが、夫妻は不正をしているわけではない。かつて工場労働者だったイアンさんは、働く意志はあるが、「3週間に1度襲ってくるひどい頭痛で数日間寝こむ」ため、就労に差し支えると心配する。ステファニーさんは実際にボランティアで仕事をしていると強調し、「私たちは1日中、居間でテレビを見て過ごすような怠け者のたかり屋ではない」と反論。仕事を通して少しでも社会に還元したいのだと話す。
それでも有給の仕事に就かないのは「国の仕組みのせい」だとステファニーさん。仮に今の職場で給料を得た場合、その額は年収に換算して1万3000ポンド(約158万6000円)となり、家賃も賄えない。無給で生活保護を受けた方が、給与を得るよりも「お得」というわけだ。納税者に対して申し訳ない思いがあるというが、「もらえるものを返すのはバカバカしい」と割り切ってもいる。不正でない以上、自分の方から受給をやめるつもりはないそうだ。