母の日に、色とりどりの花と香りがお出迎え
お届けした花は被災した女川コンテナハウス商店街の生花店・ふらわ~しょっぷ花友から購入しました。花友の鈴木行雄・美智子さんご夫妻、近所の子どもたちと。(右は東京事務局の伊藤美洋 2012年5月13日 宮城県牡鹿郡女川町)
難民を助ける会では、東日本大震災の復興支援活動の一環として、「被災地に花とまごころをとどけよう」キャンペーンを行っています。津波ですべてを流され、彩りのない被災地に少しでも多くの花を届けようという趣旨 に、日本全国の方々がご賛同くださいました。2012年5月13日、宮城県石巻市にある被災障害者のための仮設福祉ハウス「小国の郷」の入居者50世帯 に、花の苗と日本全国から寄せられた応援メッセージをお届けしました。
今回お届けした花は、ガーベラとミニバラです。購入先の女川コンテナハウス商店街にある生花店・ふらわ~しょっぷ花友(はなゆう)に着くと、色とりどりの花と、ミニバラの良い香りが出迎えてくれました。鉢植えは、ふらわ~しょっぷ花友の鈴木行雄さんと妻の美智子さんが一つひとつ心を込めてラッピングしてくださいました。
ふらわ~しょっぷ花友は、震災前は海岸沿いに店を構えていましたが、津波で流されてしまいました。ご家族は命からがら高台に逃げ、避難所生活を経て、2011年7月に難民を助ける会が支援したコンテハウス商店街で店舗を再開されました。鈴木行雄さんは、「店の売り上げは震災前の半分だけれど、こうして店を再開できるだけでもありがたい」と語ります。今回のキャンペーンのために日本全国から寄せられたメッセージカード を、鈴木さんは「涙が出るねぇ」と言いながら、一枚ずつ読み入っていました。
神戸のミュージシャンによるミニコンサートも
その後、「小国の郷」にお花とメッセージをお届けに行くと、仮設の皆さんは待ってましたとばかりに私たちを会場となる集会所に案内してくださいました。この仮設住宅には、知的・精神・身体などさまざまな障害のある方とそのご家族が入居されています。今回は、その集会所でミニコンサートを開き、その後、お花をお配りすることにしました。
ミニコンサートには、兵庫県神戸市在住のシンガーソングライター・すぎたじゅんじさんが来てくださいました。すぎたさんは阪神・淡路大震災の際にも被災地でボランティア活動やチャリティコンサートなどを実施。また、ご自身の音楽活動の傍ら、当会の地雷廃絶キャンペーン絵本『地雷ではなく花をください』に寄せた『翼はなくても』という歌を作詞・作曲し、そのCDの売り上げを難民を助ける会にご寄付くださっています。
『翼はなくても』の歌詞は、遠く離れた大地に住む人々へ一輪の花を届けたいという内容で、東北に住む被災地の方々に花を届けようという今回のキャンペーンの趣旨にぴったりです。そこで、すぎたさんとのご縁を作ってくれた当会の西日本担当理事・鷲田マリを通じて神戸からすぎたさんを招き、被災地で花を配る際に歌っていただこうということになりました。
「翼はないけれど、会いに来たよ」
すぎたさんのミニコンサートは、ギターの弾き語りによるルイ・アームストロングの"What a wonderful world(この素晴らしき世界)"に始まり、幅広い年代に愛される『朧月夜』や『故郷』などの曲に続き、すぎたさんのオリジナルソングを披露。最後には『翼がなくても』の楽譜を配り、仮設住民の皆さんと一緒に合唱しました。
これまで仮設では生演奏を聴く機会がなかった住民の皆さんは、すぎたさんが歌い出すと、身体でリズムをとったり口ずさんだりして、終始楽しそうでした。『翼はなくても』を合唱する際は、覚えやすいメロディということもあり、「翼などないけれど会いに来たよ とどけたい 一輪の花を君に」という歌詞を、皆さん楽しそうに歌っていました。演奏終了後も、「良かったねぇ」「もっと聞きたい」とアンコールも出るほどでした。すぎたさんも、「音響設備がない中、僕の生の声を、ギターの音を、しっかり聴こうとしてくださっている皆さんの心が伝わってきました。今日初めて聞くこの歌を、ニコニコしながら唄っている皆さんの顔をみて、来て良かったとあらためて感じました」。
花と応援メッセージ、そして音楽を通じて「まごころ」を
演奏終了後、全国から寄せられた応援メッセージのついた花をお配りしました。受け取った住民の一人、阿部るみ子さんは、滋賀県の女性からのメッセージ「笑顔で元気でいてください」と黄色いガーベラを手に、「遠くからありがとうございます。笑顔でやっていきます」と嬉しそうに語ってくれました。阿部さんは重度の障害がある寝たきりの娘さんとともに震災後避難所を転々とされ、車の中で1ヵ月生活されたこともあったそうです。2011年7月にやっとこの仮設に入居できました。
他にも住民の皆さん同士、震災当時の大変な経験をお互いに話したり聞いたりしながら、励まし合っていました。障害 のあるお子さんをお持ちの方々同士だからこそ分かりあえるご苦労もあることでしょう。そんな方々に、花と応援メッセージ、そして音楽を通じて、全国の皆さ まの「まごころ」を、確かにお届けしました。
「被災地に花とまごころをとどけよう」キャンペーンのお申し込みは5月31日まで受け付けています。引き続き、たくさんの皆さまのご参加をお待ちしています。
(難民を助ける会 東京事務局 伊藤美洋)
>>「被災地に花とまごころをとどけよう」キャンペーン
塚田とよ子さん(右)は津波に流されましたが、家の屋根に這い上がり一命を取り留め、現在は障害のある息子さんと2人暮らしです。「流されたときはもうだめかと思ったけれど、息子のことが頭をよぎってね。やっぱり生きなきゃと。なんとか助かった命だもの、大事にしなくちゃね」。塚田さんは、愛知県に住む男性からの「くじけずに生きてください。特に頑張る必要はありません」というメッセージに、「勇気づけられました。ありがとうございます」と語られました。(2012年5月13日 宮城県石巻市)
阿部裕子さん(左)は、ミニバラの鉢植えと群馬県の女性からのメッセージ「花からエネルギーをもらって元気になってください」を受け取り、「お花が大好きなので、とても嬉しいです。娘と一緒に大切に育てます。バラは株分けできるので、これから増やしていきたいです」。裕子さんは、震災当時必死で津波から逃れましたが、あと数分逃げるのが遅ければだめだっただろうとのこと。重度の知的障害のある娘の美沙希さん(右)とは何日も連絡が取れなかったそうです。(2012年5月13日 宮城県石巻市)
すぎたじゅんじさんの『翼はなくても』の演奏の様子は、こちらからご覧いただけます。
認定NPO法人 難民を助ける会
1979年、インドシナ難民を支援するために、政治・思想・宗教に偏らない市民団体として日本で設立された国際NGOです。
2011年3月11日に発生した東日本大震災を受けて、地震発生当日より活動を開始。宮城県仙台市と岩手県盛岡市に事務所を構え、緊急・復興支援を行っています。
活動にあたっては、特に支援から取り残されがちな障害者や高齢者、在宅避難者、離島の住民などを重点的に支援しています。食料や家電などの物資の配布、炊き出し、医師と看護師による巡回診療など、多面的な活動を続けています。
■ホームページ http://www.aarjapan.gr.jp
■ツイッター http://twitter.com/aarjapan