家電大手のパナソニックは、2012年度中に本社の従業員約7000人を、3000~4000人削減するリストラ策を検討している。同社が本社要員の大幅な削減に踏み切るのは初めてだが、事業の再編や三洋電機の子会社化などを通じて膨れあがった本社機能をスリム化して意思決定を速める狙いがある。
同社は12年3月期連結決算で7722億円の、過去最大の最終赤字を計上した。「小さな本社」改革は、6月末に就任する津賀一宏次期社長が手がける最初の経営改革であり、業績のV字回復を目指す。
すでにグループで3万人を削減
2012年5月29日付の日本経済新聞によると、パナソニック本社のスリム化は、主に調達や品質保証、情報システムなど事務部門や研究開発部門、生産技術部門の約7000人を対象に、他の事業などへの配置転換や早期希望退職を募ることで、ほぼ半数を削減するとされる。早ければ7月にも早期退職の募集や子会社への異動などについて、労使協議に入る見通しという。
また、研究開発や生産技術などの機能を分社し、本社から新会社に従業員を異動させることも検討している。
本社機能の見直しを踏まえ、2013年3月期には500億円の連結最終黒字の必達を目指す。同社は、「本社改革についてはさまざまな検討をしていますが、現在決定した事実はありません」とコメントしている。
とはいえ、パナのニックの12年3月期連結決算は、売上高が7兆8462億円(前期比9.7%減)、営業利益437億円(同85.7%減)。テレビ事業での大規模な早期退職の実施などに伴う構造改革費用として7671億円を計上したことで、純損失は7722億円に膨らんだ。
この1年、テレビや半導体などの不振の事業で人員削減を実施したほか、三洋電機の白物家電事業を中国ハイアールに売却するなど、すでにグループの従業員数はこの3月末で約33万人となり、前年同月に比べて約3万人減っている。
経営陣も、6月27日の株主総会をもって大坪文雄社長は会長に退任し、津賀専務が社長に昇格。中村邦夫会長は代表権のない相談役に退くことを発表した。
テレビは「主力事業」次いで環境・エネルギー
業績不振の原因は、テレビ事業だ。2011年度の売上高は、前年度から8464億円も減少した。このうち、超円高の影響で約2000億円が減少。残り約6400億円のうち、薄型テレビなど主力のAV機器事業の減収が7割を占めていた。
5月11日の決算発表時に、大坪社長は「06年にプラズマTV、08年に液晶TVへの大きな投資を決めたが、結果として過剰投資になった」と語った。プラズマTVには延べ6000億円を投じたが、超円高の影響と韓国勢によるテレビの低価格の攻勢によって、「当初目指した台数をつくったとしても赤字になる」(大坪社長)ほど苦戦した。
ただ、テレビ事業は赤字とはいえ、パナソニックの売上高約8兆円のうち、1兆円近くを稼ぎ出す主力事業だ。同社も、「引き続き注力していく事業であり、テレビ、半導体事業は今期中の赤字撲滅を目指す」と強調する。
優先順位をつければ、「まずテレビ、半導体事業があって、次いで成長分野の環境・エネルギー、白物家電事業」と続く。実際に、リチウムイオン電池事業などの売上高は約6000億円だし、太陽電池事業に至っては1000億円弱でしかない。
テレビ、半導体事業の業績回復は厳しい過ぎるくらい厳しい。そうした中で、人員削減や資産売却で収益を確保できているうちに、「環境革新企業に脱皮していく」(津賀次期社長)という「計算」だが、果たしてうまくいくのだろうか。