お笑いコンビ、次長課長の河本準一さんが、母親の生活保護受給を謝罪したことについて社会学者の宮台真司さんがコメントした。河本さんを追及していた片山さつき自民党参院議員を批判する内容で、話題を呼んでいる。
河本さんの謝罪会見が行われた2012年5月25日放送のラジオ番組「荒川強啓 デイ・キャッチ!」(TBSラジオ)にゲスト出演した。
河本批判で「本質的な議論がなされなくなる」
河本さんの母親は河本さんがお笑い芸人になったものの、仕事がなく収入もわずかだった15年前から生活保護を受給。4月に週刊誌が「年収5千万円の人気芸人の母親が生活保護を受給」などと報じたことを受け取りやめた。河本さんは自分の年収が増え始めた5~6年前からの分を返還するとしている。
謝罪会見後もネットでは、河本さんを批判する声が大々的に挙がっている。宮台さんは「今はネット社会なので、こういう道徳的なフレームに触れるような問題があると炎上する」とし、今回の騒ぎも予測できたとする。
最初の週刊誌報道では河本さんの名前は伏せられていたが、その後、一部ネットメディアが実名で報道した。片山議員も河本さんの名前を出して、ブログやツイッターで追及していたが、これが「非常に大きな問題だ」だとする。片山議員の行動は「人気取りであると同時に不用意な、というか不必要な問題の拡大」だとし「本質的な議論がなされないで倫理的な批判ばかりが出てくるということになってしまう」と懸念する。
福祉事務所にも問題がある
宮台さんは、今回の件は河本さんと福祉事務所のやりとりによって「当局が許容していたこと」だとし、本来なら批判についても河本さんと福祉事務所に半々か、4:6で、6の方が福祉事務所にいかないとおかしいとする。
役所には税金を使って、税金の使い方を最適化した上で福祉を行う責務がある。そのため、役所が最適化の責務を怠っていたことになるとし、
「役所がそれでいいというのなら、『じゃあ母親は生活保護のままでいいや』って思う人が出てくるというのは、もちろん道義的に責めていいけれど、いくらでもあり得ること。行政の適切性という観点で考えれば、そういう人間が必ず出てくるということを想定した上で、枠組みを適正化するべき。それが本質なのに、実名を挙げて特定の個人に批判を集中させた片山さつきという自民党の議員の資質には大きな疑念がある」
と語った。自民党に対しては「問題の本質を見失わせるようなスキャンダラスティックな意見表明をするなと(片山議員に)警告するべきだ」としている。
片山議員擁護の声も多い
宮台さんのコメントはネットでも話題になり、多くの書き込みが寄せられた。「全くそのとおり 役所の怠慢と制度を放置してきた官僚政治家が一番悪い」「片山もマスコミも、スキャンダリズムの中で己の利益を追ってるだけだから、 問題の本質はスルーされてる」と同意するものもツイッターなどに相当あるようだが、
「片山が頑張ったから、改めてナマぽ問題が表面化したんだろ? 国会議員として良い仕事しただろ」
「ナマポに触れたらこの有様か 今後一切不正受給に触れる議員は現れないな」
「河本はテレビにあれだけでてるから公人と同じなんだよ 民主党が何もやらないから片山がやってるだけだろ」
といった片山議員擁護も多い。
河本さんの謝罪会見のあった25日、片山議員がスポーツ報知の取材に応えている。今後は生活保護制度の改正に動き出す方針で「これをきっかけに、受給の膨張が事前防止できるのは大きい。全国の方々に『もらい得』はない、というのを伝えられたので」。河本さんについては「個人(攻撃)が目的じゃない」とする一方で「新事実が出てくれば別ですよ。いろんな情報提供がありますので」と語っていたという。
河本さんは26日未明、10日ぶりにツイッターを更新した。「この度はファンの皆様、関係者の皆様に大変ご迷惑とご心配をおかけしまして本当にごめんなさい。 応援してくださるファンの皆様には舞台やテレビなどで、一日も早く恩返しが出来たらと思います。 これからも次長課長を宜しくお願いします」と書いている。