新聞社のウェブサイト有料化をめぐる動きが、再び活発化し始めた。先行しているのは日経・朝日だが、毎日、読売が新たに参入した。
毎日はスマートフォンとタブレット端末に配信対象を特化し、読売は割安な購読料を設定したのが特徴だ。有料会員数が伸び悩んでいた朝日も、無料サイトを事実上廃止した上で「無料会員」を設定して有料会員に誘導するなど、テコ入れが進む。
「先発組」日経は有料会員20万人
新聞社の有料サイトで先行するのが日経新聞。2010年3月に創刊された電子版は、12年4月時点で135万人以上の会員を獲得している。そのうち、紙媒体に月額1000円プラスして購読する有料版の購読者も20万人を突破している。創刊時点で掲げていた、
「早期に50万ID(有料・無料合わせた会員数)を達成し、早めに100万台に乗せたい」
という目標は達成できたと言えそうだ。日経によると、この有料会員数は、米ウォール・ストリート・ジャーナル、米ニューヨーク・タイムズ、米フィナンシャルタイムズに次ぐ規模だという。
料金体系など日経のビジネスモデルを踏襲した「朝日新聞デジタル」は、11年5月に創刊。だが、日経と違って無料で見られる「アサヒ・コム」を存続させたため、有料購読者が伸び悩んだ。12年1月時点では約6万人と日経の3分の1の水準だったが、1月下旬にはアサヒ・コムを有料版に統合。無料で読める記事の長さや記事数が減少し、有料会員に誘導する狙いを明確に打ち出した。
4月1日にはサイトをリニューアルし、5月21日には「無料会員」を新設。無料会員は、有料会員のみが読める記事のうち、1日3本だけを無料で読めるほか、過去1年分の記事の見出し検索ができる(有料会員は本文も読める)。
毎日・スポニチはPC向けに配信せず
後発組の読売・毎日は、それぞれの特徴を明確に打ち出している。
読売新聞が5月14日スタートした「読売プレミアム」は、紙媒体プラス月額157円(10月末までは無料)という他社に比べると割安な購読料が特徴。
過去1年分の記事を検索できるほか、紙媒体でしか読めなかった解説記事や連載を新たに読めるようになった。無料サイト「ヨミウリ・オンライン」のコンテンツの大半は存続するが、「編集手帳」「よみうり寸評」「人生案内」といった名物コラムは、有料版でないと読めなくなった。
対応端末で差別化を図るのが、毎日新聞社とスポーツニッポン新聞社だ。両社が5月25日に創刊した新媒体「TAP-i(タップアイ)」では、両紙の記事に加えて、紙面に掲載しきれなかった写真や動画を掲載する。スマートフォンやiPad(アイパッド)といったタブレット端末のみに対応し、PC向けには配信しない。紙媒体(毎日新聞のみ対応、スポニチは今後対応予定)プラス月額500円で読めるが、8月までは無料。無料サイト「毎日.jp」は存続する。
地方紙にも、その動きは波及している。共同通信は加盟社向けに電子新聞配信サイト「ニュースオアシス」を提供しており、すでに中国新聞、山梨日日新聞、福井新聞などが利用している。各社ごとに料金は異なるが有料。