物心づいたころから、町(現田村市常葉町)の裏山の雑木林で遊び回っていた。小学校に入学するより早く山学校に入学した、と思っている。10代後半からは意識して雑木林の中へまぎれ込むようになった。いわきで職を得たあとは休みの日(後年は昼休みも)、職場と自宅から近い石森山(=写真)へ車を走らせた。
20代後半からおよそ20年間、石森山を丸かじりするように歩き回った。わが子をたたきおこして野鳥観察に連れだすこともあった。
で、石森山の野鳥・野草・菌類については少し語れるようになったかもしれない。が、地質・地形、あるいは花・鳥・キノコ以外の生物は、となるとよくわからない。いずれにせよ、石森山は平のマチの人間の里山だ。アウトドア派を引き付ける。生活環境保全林として遊歩道などが整備されていることが大きい。
ほぼ1年前の早朝、夏井川渓谷にある無量庵へ行った帰り、石森山の林道を通った。キジとリスがいた。先月も同じように石森山を経由したら、山菜を採りに来たと思われるおばさんたちがいた。里山ゆえの光景だ。
3・11後、夏井川渓谷であろうと、石森山であろうと、まともに森を巡ったことがない。フラストレーションがたまっている。森の中に身を置きたい――という気持ちが抑えきれなくなって、先日、石森山へ出かけた。
石森山の遊歩道は10コース、計11キロ。軸になるのは「せせらぎの道」だ。おわんで言えば、へりから底へとゆるゆる下っていく。底で「さえずりの道」が、次いで「マンサクの道」が合流する。「せせらぎの道」を歩いた。鳥のさえずりに慰められた。
新緑の「野鳥の森」だ。原発事故がなかったら、5歳の孫に遊歩道めぐりを体験させていたかもしれない。が、今はそれが難しい。雑木林の価値・意義をどう孫たちに伝えたらいいのか。これだけは口で言ってもわからない。
(タカじい)
タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
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