毎年夏の概算要求シーズンに向けて、全国の地方自治体が陳情団を霞ヶ関に派遣する。だが、長崎県は、突然の陳情中止に追い込まれるという異例の事態に陥っている。中村法道知事が与党を批判するスピーチをしたことで、省庁への陳情を取り次ぐ民主党を怒らせてしまったからだ。中村知事は自民党などの支持を受けて当選したという経緯があり、選挙戦では民主党幹部が恫喝ともとれる発言をしたこともある。この時の関係が尾を引いている可能性もある。
陳情を民主党経由に一本化して「政治主導」演出
自民党政権時代は、都道府県の知事などが上京し、国会議員や省庁に直接要望していた。09年夏の政権交代以降、ルールが一変。陳情を民主党の地元県連の仲介を受けた上で党本部に一元化し、各省庁に取り次ぐことになった。「政治主導」を演出するためだ。
長崎県も、中村知事が5月24日から25日にかけて上京する予定だったが、21日夕方になって、県連が党本部と協議した結果として「今回は受けられない」などと県に伝えてきたという。09年以降の「民主党ルール」のため、県連が仲介を拒否したことで県が省庁に陳情ができないという事態になっている。
民主党が問題視したのが、5月13日に自民党県連の定期大会で行ったスピーチ。中村知事は、原発の再稼働問題への対応について
「今の政権与党が、こうした山積する課題に対応する能力が本当にあるのか疑問を禁じ得ない」
と述べ、民主党の政権担当能力を疑問視。その上で、自民党が長年政権党を担当してきたことから、
「自民党への国民の期待が高まる」
と、自民党を持ち上げた。
民主党県連では、九州新幹線長崎ルートや長崎自動車道の4車線化など、政権交代後に民主党政権が実現した功績があると主張しており、知事発言を腹に据えかねたようだ。