経営再建中の日本航空が2012年3月期連結決算で過去最高益を上げるなど好業績を達成したことに対し、ライバルの全日本空輸が焦燥感を募らせている。全日空の伊東信一郎社長は5月17日の記者会見で「日航への特例がずっと続けば、我々との差が広がる。フェアな競争環境にあるといえるのか」と強い口調で述べ、日航の急回復ぶりへの危機感を露わにした。
経営破たんで様々な「優遇」
日航の2012年3月期連結決算は、売上高が1兆2048億円、本業のもうけを示す営業利益が2049億円、最終(当期)利益が1866億円。営業、最終利益ともに過去最高を更新した。対する全日空の同連結決算は、売上高が1兆4115億円、営業利益は970億円、最終利益281億円。売上高では日航を2000億円超上回ったし、営業利益は過去最高の「好決算」だが、その営業利益でさえ日航の半分以下、最終利益に至っては実に約7分の1というレベルだ。
日航が達成した好業績は、経営破たんに伴って断行した従業員の約3分の1に上る1万6000人の削減や赤字路線の撤退など大規模なリストラの効果が大きい。さらに、破たんに伴い多額の評価損を計上した結果、ばく大な繰越欠損金(赤字)が発生し、法人税をほぼ支払わなくてよい状況になっている。金融機関による債権放棄も受けて金利負担も軽く、利益を大きく押し上げる結果となった。