経済同友会が2012年5月17日、民主党などに党綱領を制定し、代表選挙や連立協議のあり方を明確にするよう求める提言をまとめた。財界の中では、経団連よりも民主党政権に近いとされる同友会が、敢えて民主党に苦言を呈すことで、自民党、民主党の2大政党制が成熟するよう求めている点が注目される。
2大政党の政党力不足
提言は「政党・政策本位の政治の成熟化と統治機構改革~『決断できる政治』の実現に向けて」というタイトルで発表された。提言は現状の政治が抱える課題を列挙し、その解決策を提言の形で具体的に指南している。
同友会は「2009年の民主党への政権交代は、日本社会を取り巻く閉塞感を打破してくれるのではないかという国民の期待に後押しされたものだった。しかし、政権交代から2年半を経て、国民の政治不信は増長し、特に若年層の政治離れや将来への閉塞感は今までにないほど高まっている」と苦言を呈した。
現状の課題として、同友会は「国会運営の停滞など政治の機能不全は2大政党の政党力不足に起因する」「2大政党制とはいえ、両党の所属議員が依って立つ考え方の差異は不明瞭で、マニフェストの内容にも本質的な違いは見えがたい」など指摘。これらの課題の解決策として、「政党法を早期に実現し、各党は綱領を制定すべきだ」と提言した。
これはわかりにくいので、解説が必要だろう。自民党には党綱領が存在するが、民主党には党綱領が今もって存在しない。事実上、首相候補となる党首を選ぶルールも明確には決まっていない。同友会幹部は「何億円もの政党助成金を受け取る政党が、このようにいいかげんでよいのか」と疑義をはさみ、新たに「政党法」を制定して、政党して最低限必要な項目を明確に規定すべきだと主張しているのだ。民主党に党綱領がなく、党首を選ぶルールも明確には決まっていないことは、一般にはあまり知られていない。
「1票の格差」についても言及
政党法に盛り込むべき項目としては、①党綱領の制定、公開、②マニフェストに盛り込むべき事項、政策手順の規定・公開、③政権獲得後のマニフェスト修正に必要な手続き、④代表選挙のあり方、党首の任期⑤政党助成金の支給対象・管理のあり方、使途の公開、⑥連立協議のあり方、⑦候補者選定・比例代表名簿の順位付け過程の透明化――などを挙げた。
同友会幹部は「これらの項目が明確でないと、国民に政党の軸が見えない。政党とは単に頭数がそろっていればよいものではない。政党の軸が明確でないから、数が力になってしまう」と指摘する。
このほか、「選挙運動へのインターネットの活用やインターネット投票の解禁に向けた制度設計も行うべきだ」「選挙権の付与年齢を18歳に引き下げるべきだ」などと主張。
「1票の格差」については「次回の総選挙は少なくとも1.5倍未満の格差で実施すべきだ。参議院についても1人1票が原則だ」として、早期に選挙制度審議会(第⑨次)を設置し、検討を開始すべきだとしている。